アドバンテスト|懐疑の中の最高益

· Nikkei

最高益の中身

半導体検査装置大手のアドバンテストが29日、2026年4月から6月期の連結純利益が前年同期比93.8%増の1748億円になったと発表しました。四半期として過去最高の水準です。同時に発表した2027年3月期通期の純利益予想も、従来の4655億円から76%増の6600億円へ大きく引き上げられました。アナリスト23人の平均予想5180億円を上回る数字です。

通期の営業利益予想も従来の6275億円から8460億円、69.5%増へ引き上げられました。背景にあるのは推論AI向け半導体のテスト需要が、会社の当初想定を大きく上回っていることです。会社は2026年の検査装置市場全体の見通しも従来から約19%引き上げ、130億から145億ドル相当になるとの試算を示しました。数字だけを見れば、非の打ちどころのない決算です。

ここで一つの疑問が生まれます。これほどの好決算が予想されていたなら、なぜアドバンテストの株価は決算発表前日まで下落を続けていたのでしょうか。実はこの好決算の裏には、市場が抱えていた強い警戒感があります。

売られていた前夜

決算発表前日の28日、アドバンテスト株は10.1%安の2万5455円まで急落し、日経平均の値下がり寄与トップとなって指数を約705円押し下げました。前日27日も同様に値下がり寄与トップで、約136円分指数を押し下げています。中国企業による国産露光装置の製造開始という報道をきっかけに、半導体製造装置株全体が売られる流れの中にありました。

投資情報サイトig.comの決算前分析は、この警戒感の根をさらに3ヶ月前まで遡って説明しています。アドバンテストは4月27日の前回決算発表で慎重な業績見通しを示し、その直後から3営業日で合計11.70%安という急落を招きました。市場は今回も、会社側が期待を裏切るような慎重な見通しを出すのではないかという不安を抱えたまま、決算発表を迎えていたのです。

同記事はさらに、決算発表前の株価収益率が41.8倍程度に達していたことも指摘しています。前回決算時の43.9倍からは和らいだとはいえ、依然として高い期待がすでに株価に織り込まれた状態でした。だからこそ、単なる好決算では素直な株価上昇につながりにくい構造があったのです。

懐疑の構造

アドバンテストの有価証券報告書によると、エヌビディアは2026年3月期の総収入の20%を占める主要顧客で、TSMC向けも11%を占めています。両社の好業績はアドバンテストへの期待を押し上げる材料である一方、AI関連の設備投資が過熱しているのではという懸念とも表裏一体です。

7月23日に発表されたアルファベットの決算では、設備投資見通しの引き上げが逆に悪材料視され、米国の大手ハイテク株が急落しました。この流れを受けて24日の東京市場でも半導体株が急落し、アドバンテスト株は6%超下落しています。AI関連企業が投資に見合う十分な利益を上げられなければ、いずれ半導体各社の強気な見通しが裏切られるという懸念が、市場の根底に流れていました。

この文脈で見ると、今回の大幅な上方修正は単なる好決算ではなく、市場が抱いていたAIブーム継続への懐疑に対する一つの反証として位置づけられます。実際、記事によれば29日午前の取引でアドバンテストは4.3%高まで反発し、決算発表を待たずして値上がり寄与トップに転じる場面もありました。

残された検証ポイント

ただし過去の前例は慎重さを促します。ig.comの記事は、2025年7月29日の決算発表でもアドバンテストは通期見通しを上方修正しましたが、市場の期待には届かず、翌30日の株価は前日比1.06%安という冴えない値動きだったと伝えています。当時、株価が本格的に上昇に転じたのは、その後9月以降のAI関連企業による巨額投資発表を経てからでした。

アドバンテストの上方修正だけでAIブームへの懐疑が完全に払拭されると判断するのは早計です。30日の東京エレクトロン、31日のキオクシアホールディングスと、同じ半導体テーマの決算発表が続きます。これらが同様に強い数字を示すかどうかが、今回の反発が一時的な戻りか、それとも懐疑を乗り越える転換点かを見極める次の材料になります。現時点で確かなのは、数字そのものはアナリスト予想を上回る強さを示したという事実であり、市場がそれをどう消化するかは、なお開かれた問いのままです。

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