グーグルのAI投資1750億ドル|脱エヌビディアへの転換点

2026-04-21 · Nikkei

AIマネーの新たな流向

月曜日のエヌビディア株の下落は、決算やマクロ経済のショック、あるいはAIチップ需要の減退によるものではありません。その理由は、同社の最大顧客の一つが「代替品」の開発に動いているという観測にあります。

報道によると、アルファベットはGoogle Cloudのワークロード向けに2種類のカスタムAIチップを共同開発するため、マーベル・テクノロジーと先進的な交渉を進めています。これを受け、マーベルの株価は4%近く急騰した一方、アルファベットは横ばい、エヌビディアは約1%下落しました。小幅な動きですが、市場には明確なメッセージが伝わりました。

同日、JPモルガンは「Google Cloud Next」イベントを前に、アルファベットをトップピックに指名しました。Google Cloudの受注残は2025年末時点で前年比160%増の2400億ドルに達しており、2026年にはグループ全体の売上高の19%を占めると予測されています。AIインフラの構築は減速するどころか加速しており、焦点は「アルファベットが投資するかどうか」ではなく、「その巨額の資金が誰に支払われるか」に移っています。

アルファベットの2026年の設備投資見通しは1750億ドルから1850億ドルに上ります。月曜日の市場の反応は、この膨大な資金が半導体サプライチェーンの勢力図を塗り替える可能性を示唆しています。

内製化へ舵を切る顧客

ハイパースケーラーが独自チップを開発する論理は明快です。グーグルの推論やメモリ集約型処理、大規模なクラウド提供といったワークロードには、汎用GPUではなく、特定のタスクに最適化された低コストな専用シリコンが求められています。

この分野ではこれまでブロードコムが支配的な地位を築いており、メタも自社インフラ向けにブロードコムとの提携を正式化しました。今回、アルファベットがマーベルを陣営に引き入れようとしている動きを受け、AI投資への強気な見通しが相次ぐ中でエヌビディア株だけが売られる結果となりました。

これは、2020年にアップルがインテル製プロセッサを廃止し、独自チップ「M1」へ移行した際の構図と重なります。当初は特定のデバイスに限定された動きと見なされていましたが、わずか2年でアップルの利益構造は劇的に改善し、インテルは最重要顧客を恒久的に失いました。内製化は段階的に進みますが、その第一歩は常に「特定のワークロードへの対応」という名目から始まります。

アルファベットとマーベルの交渉は初期段階であり、正式な合意には至っていません。しかし、推論用チップの共同開発が成功すれば、その範囲は拡大するのが通例です。エヌビディアにとっての真の脅威は、グーグルとの取引が完全に消えることではなく、同社のAI予算に占めるエヌビディア製品の割合が、どの程度のペースで圧縮されていくかという点にあります。

今後90日の注目点

この構造的シフトの実態は、今後2つのイベントで明らかになります。一つはラスベガスで開催される「Google Cloud Next」です。JPモルガンは、同社が多段階のワークロードを実行するAIエージェント、いわゆる「エージェンティック・クラウド」に焦点を当てると予想しています。ここで独自チップの進展やインフラの自立性が強調されれば、マーベルとの交渉はより大きな再編の序章となります。

もう一つはアルファベットの次期決算発表です。経営陣が設備投資の配分について、汎用チップからカスタムシリコンへのシフトを示唆するかどうかが重要です。「エヌビディア製GPUを使用している」という説明から、「自社のワークロードに最適化した構築を進める」という表現への変化は、構造的な変化を示すシグナルとなります。

Google Cloudの2400億ドルの受注残は、計算ユニットあたりのコスト削減を求める強い圧力となっています。独自チップは開発後の大規模運用において、汎用GPUよりも1推論あたりのコストを低く抑えられるため、クラウド収益の拡大に伴い、内製化の経済的合理性は高まり続けます。

このシナリオを左右するのは、エヌビディア自身のロードマップです。次世代の「Blackwell」以降が、汎用チップと専用チップの効率性の差を埋めることができれば、内製化の動機は弱まります。また、エヌビディアのCUDAを中心としたソフトウェア・エコシステムは依然として強力な障壁であり、顧客が求めるワークロードの可搬性という点では、第三者ベンダーのハードウェアが長期的に優位を保つ可能性も残されています。

月曜日のエヌビディア株の1%の下落は、決して暴落ではありません。しかしそれは、他の大手顧客もアルファベットと同様の議論を始めているのではないかという、市場からの重要な問いかけなのです。