ゴールドマン初のビットコインETF|投資家の期待と戦略の実態

2026-04-15 · Nikkei

ウォール街の参入と戦略の裏側

4月14日、3.65兆ドルの運用資産を抱えるゴールドマン・サックスが、同社初となるビットコイン関連商品の発行をSECに申請しました。既に現物ETFを展開するモルガン・スタンレーに続くこの動きを、市場は「強気相場の証明」と受け止めました。しかし、申請書類の詳細は異なる現実を示しています。新設される「ビットコイン・プレミアム・インカムETF」は、資産の80%以上をビットコイン関連に投じる一方、その核心はカバード・コール戦略にあります。ビットコイン現物のポジションを保有しながらコール・オプションを売り、プレミアムを月次の分配原資とする仕組みです。オプションの上乗せ比率は市場環境に応じ40%から100%の間で調整されます。ベンジンガ誌が「高齢投資家向けの飴」と評した通り、これは価格上昇に賭けるものではなく、上昇益を売却してインカムを得るための商品なのです。

強気な解釈が逆説的である理由

ゴールドマンの参入は、機関投資家のエコシステム拡大という意味では重要ですが、その性質は極めて限定的です。本商品は、価格変動による損失を嫌いつつ利回りを求める年金基金や富裕層向けに設計されています。投資家はビットコインの上昇を信じる必要はなく、ただ「ボラティリティ(価格変動)」が継続することに賭ければよいのです。2024年初頭にブラックロックが設定した現物ETFは、流入額が直接的に現物の買い圧力となる構造でした。対して、ゴールドマンの戦略は将来の上昇益を売却するため、現物価格への押し上げ効果は限定されます。最大100%のヘッジがかかった状態では、ビットコインが急騰してもファンドの利益は限定され、実質的にはボラティリティを収益化するインカム車両と化します。ウォール街はビットコイン相場に追随したのではなく、市場の熱狂を「収益化」し始めたといえます。

市場構造の変化と今後の注視点

ゴールドマンのようなインカム型商品の普及は、ビットコイン市場に特有の影響を及ぼします。機関投資家の資金流入が増える一方で、コール売りの圧力が価格の上昇を抑制する「蓋」として機能する可能性があるためです。ボラティリティが圧縮されれば、これらのファンドが提供する利回りも低下し、商品の魅力が薄れるという逆説的な構造も抱えています。ただし、運用資産が50億ドルを突破したブラックロックの「iシェアーズ・ビットコインETF」のような現物需要や、国家レベルの蓄積がこの圧力を上回れば、オプション市場の影響は無視できるものとなります。今後注視すべきは、ビットコインの30日予想ボラティリティ指数です。指数が50を上回れば、ゴールドマンに続く同様のファンド乱立を招くでしょう。逆に40を下回れば、このビジネスモデルは成立しにくくなります。明日のオプション価格の動きが、市場がこの戦略の本質を理解したかどうかの試金石となります。