ゴールドマン決算|過去最高益と逆行する株価

2026-04-14 · Nikkei

市場の祝祭と売りの交錯

ゴールドマン・サックスが、史上2番目に高い四半期決算を発表しました。純収益は172億ドル、純利益は56億ドルに達し、1株当たり利益(EPS)は17.55ドルと過去2番目の高水準を記録。自己資本利益率(ROE)も約20%と、あらゆる指標で勝利と言える内容でした。しかし、株価は同日に2.9%下落しました。

この下落は決して軽微なものではありません。月曜日のダウ工業株30種平均において、同社はワーストパフォーマーとなりました。トランプ大統領がホルムズ海峡の海上封鎖を発表したことで原油価格は1バレル100ドルを突破し、市場は朝方に急落。その後、ニューヨーク・ポスト紙がパキスタンのアナリストの引用として、イランがウラン濃縮停止の条件を検討中と報じたことで、S&P 500はプラス圏まで反発しました。ゴールドマンの投資銀行部門(グローバル・バンキング&マーケッツ)も、諮問収益が前年比89%増となる127億ドルの収益を上げましたが、株価は指数の回復に取り残されました。

好決算が売りを招いた理由

その答えは決算説明会の中にあります。デービッド・ソロモンCEOは、完了したM&A案件の増加が諮問収益を牽引したと述べましたが、地政学リスクによるボラティリティの恩恵を受けるはずのFICC(債券・為替・商品)部門は予想を下回りました。つまり、イラン情勢の緊迫化以前に合意された案件で利益を上げたものの、戦争リスクに伴うボラティリティを収益化できなかったのです。

この違いは、今後の業績見通しに大きな影響を与えます。現在の好調な案件パイプラインは平穏な時期に構築されたものであり、ホルムズ海峡の封鎖が長引けば、企業の合併・買収判断は凍結されます。UBSは投資判断を「中立」、目標株価930ドルに据え置き、EPSの上振れは事業の成長よりも税効果によるものだと指摘しました。

また、株式引き受け収益は前年比45%増の5億3500万ドルとなりましたが、原油100ドル超の戦時下では新規発行は急減速します。今回の決算は「90日前の世界」を反映したものであり、イスラマバードでの停戦交渉が決裂した「現在の世界」を反映したものではありません。投資家が今朝歓迎した19.8%のROEは、すでに過去の遺物となりつつあります。一方でインテルは9営業日続伸し、1970年代以来の長期ラリーで56%上昇。ゴールドマンはそのインフラ案件の組成を支援しながら、自社の株価は売られるという対照的な結果となりました。

今後の焦点と成長の持続性

今後の鍵は、今回のQ1決算が持続的な収益力の向上を示すのか、あるいはリスク再評価前の「最後のアウトパフォーマンス」なのかという点です。

ブラックロックは月曜日、中東リスクは抑制されるとして米国株を格上げしました。もしイランが条件を受け入れれば、M&A環境は急速に回復し、今回の売りは絶好の買い場となります。しかし、フィナンシャル・タイムズ紙が報じた通り、封鎖が第2週に入れば原油供給の目詰まりは構造化します。そうなればFICC収益は伸びるかもしれませんが、M&Aや株式引き受けの減速がそれを相殺し、通期ではマイナスに働く可能性が高いでしょう。

市場は、案件パイプラインの補充が滞るリスクをすでに織り込み始めています。決算の数字自体は強固でしたが、月曜日の売りは将来への懸念の表れです。注視すべきは、Q2に向けた大規模なM&A完了の発表が続くかどうかです。もし5月にかけてニュースが途絶えれば、今回の売りは正しかったことになります。このQ1の記録的な数字が、成長の「床」ではなく「天井」だったのか、その真価が問われています。