トヨタ円安で上方修正|上方修正は実力か

· Nikkei

上方修正と株価下落

トヨタ自動車の決算は、数字だけなら明るい内容でした。2027年3月期の営業利益見通しを3兆円から3兆4000億円へ引き上げ、純利益も3兆2500億円へ上方修正。同時に、上限1兆円の自社株買いと2億株の消却も発表しています。それでも4日のトヨタ株は1%超下落しました。日経平均が上昇するなかでの下落です。市場が見たのは、好業績そのものより、その中身でした。

円安が支えた上方修正

4〜6月期は売上高が前年同期比10.4%増えた一方、営業利益は8.8%減りました。純利益は1兆4770億円と大きく増えていますが、会社が通期の想定為替レートを1ドル150円から160円へ円安方向に見直したことが、今回の上方修正を支えています。つまり、販売台数や一台あたりの稼ぐ力が急に改善したというより、海外で得た利益を円に換算したときの追い風が強まった面が大きい。市場はこの違いを見逃しませんでした。

HVと電池の競争力

もちろん、トヨタの実力が消えたわけではありません。北米では上半期の販売が前年同期比0.9%増え、7月の米国販売でも、トヨタ全体は微減ながら電動車の比率は55.7%まで上昇しました。中東情勢によるガソリン価格の上昇も、燃費のよいハイブリッド車には追い風です。さらにトヨタは、2027年から2028年にかけて、60万台規模の国内HV用電池ラインを次世代電池へ切り替える計画を示しています。一台あたり数万円規模のコスト低減を狙うという説明は、単なる円安とは違う、製品と生産の競争力に関わる材料です。

販売とコストの弱点

ただし、販売の弱点もはっきりしています。1〜6月の世界販売は前年同期比2.9%減り、中国販売は17.1%減、中東販売は21.6%減でした。中国では現地メーカーのシェアが高まり、トヨタグループの部品会社でも中国向けパワートレーン販売が減少しています。銅やアルミなどの部材価格、米国の関税、中東情勢による供給網の混乱も、販売が伸びても利益を押し下げる要因です。トヨタ単体の販売好調だけでは、グループ全体の利益率を押し上げ切れない状況が見えます。

円安は続くのか

円安も、今回だけの一時的な材料なのか、まだ判断できません。8月3日には日米協調の為替介入を受けて円が急伸し、翌日の市場でも追加介入への警戒が続きました。ロイターの為替コラムでは、介入効果は一時的だという市場の見方が紹介される一方、筆者は中長期の円安要因が残るとの見方を示しています。これはあくまで筆者の見解ですが、トヨタ株が上方修正を素直に評価されなかった理由は明確です。円安が続けば利益は支えられる。しかし、円高へ戻れば、今回積み上がった利益の一部は簡単に剥がれます。

次の決算で見るべき点

保有者が見直すべきなのは、トヨタを「業績悪化銘柄」と決めつけることではありません。今回の上方修正を、HVの需要と電池のコスト改善という実力の部分と、為替や物流の環境要因に分けて見ることです。これから見る側にとっては、次の決算で営業利益が為替を除いて伸びるか、中国販売の減少が止まるか、HVの販売増が利益率につながるかが重要になります。

次世代電池が試金石

最も具体的な将来の観測点は、2027〜2028年に予定される次世代HV電池の国内生産です。計画通りにコスト低減とHVの収益拡大が確認できれば、今回の上方修正を構造的な競争力の表れと評価しやすくなります。逆に、円安だけが利益を支え、中国の販売低迷や供給網のコスト高が残れば、今回の数字は環境に助けられた上方修正に戻ります。加えて、熊本地震による事業影響はまだ精査中で、今回の通期見通しには織り込まれていません。トヨタの現在地は、強さが崩れたのではなく、強さと外部環境の境目がはっきり見え始めた段階です。

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