ルネサスエレクトロニクス|熊本2工場停止再開のメド立たず

· Nikkei

震度7、川尻と錦が止まった

7月28日、熊本県で最大震度7を観測する地震が発生しました。ルネサスエレクトロニクスは、震源地に近い川尻工場と錦工場の操業を、発生直後から停止しています。両工場とも従業員は全員避難し、人的被害は確認されていません。

会社発表によれば、車載半導体のウエハー前工程を担う川尻工場では壁面の亀裂と一部漏水が確認され、純水供給を一時停止しました。組立・検査を担う錦工場では、天井パネルの落下と壁面のひび割れが確認されています。二つの工場は、熊本の生産集積地の中でも異なる工程を分担しており、両方が同時に止まったことになります。

止まったのはルネサスだけではありません。ソニーグループ傘下のソニーセミコンダクタソリューションズも、画像センサーを製造する熊本工場の稼働を止めました。三菱電機も2工場で操業を停止しています。今回の地震は、一社の設備トラブルではなく、熊本に集積する半導体生産網そのものの脆弱性を浮かび上がらせました。

止まった、が壊れてはいない

工場停止という一報だけを見れば、深刻な供給ショックを想像してしまいます。しかし会社が29日朝から進めたクリーンルーム内の確認では、空調や電力供給設備に問題はなく、クリーンルーム環境自体は維持されていることが分かっています。これは、半導体製造の生命線となる設備が、外形的な被害の大きさに比べて相対的に保たれていることを意味します。

一方で、生産設備そのものや仕掛かり品への影響については、両工場ともまだ調査中の段階です。クリーンルームが無傷であることは操業再開への良い材料ですが、それだけで被害の全体像が確定するわけではありません。壁面の亀裂や漏水がどこまで生産ラインに波及しているかは、まだ明らかにされていません。

現時点で言えるのは、人的被害がなく、クリーンルーム環境も維持されているという事実が、最悪のシナリオを退けているということです。ただし、これは被害が軽微だと確定したという意味ではなく、詳細調査の結果を待つ必要がある暫定的な安心材料にとどまります。

2011年か、2016年か

ルネサスには苦い前例があります。2011年の東日本大震災では、茨城県の主力工場が3カ月にわたって生産停止に追い込まれました。この教訓から、同社はその後、工場の耐震強化を進めてきたとされています。今回の熊本の2工場が、その強化された耐震性能をどこまで発揮できたのかが、被害の実質的な深刻度を測る一つの手がかりになります。

熊本県は2016年にも大きな地震を経験しており、当時も地域の半導体工場が影響を受けています。今回の地震が2011年型の長期停止に近いのか、それとも2016年型の比較的短期の復旧に近いのかは、現時点の情報だけでは判断できません。クリーンルームが無傷であるという事実は後者に近い材料ですが、断定するには時期尚早です。

ルネサスはいずれの工場についても、操業再開の時期を明らかにしていません。今後の焦点は、生産設備と仕掛かり品への影響がどこまで確認されるかという一点に絞られます。クリーンルームの無傷という事実は前向きな材料ですが、最終的な影響の大きさは、詳細な設備調査の結果が出るまで確定的には語れません。投資家にとっては、この調査結果の発表こそが、次に注目すべき具体的な検証ポイントになります。

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