ロボット4000兆円|株高の本当の受益者

· Nikkei

表舞台:フィジカルAIと「見える」銘柄たち

2050年、世界のロボット市場は4000兆円に達するという試算が出ました。米モルガン・スタンレーがはじいた数字です。その年だけで14億台が生産され、稼働する累計台数は65億台。地球上の人口とほぼ同数のロボットが動き回る未来です。

この報道を受けて、4月20日の東京市場では関連銘柄が物色されました。ソフトバンクグループが5%超高、ファナックが4%超高。日経平均は前営業日比348円高の5万8824円で引けました。ただし上げ幅は一時700円近くまで広がった後、終盤に縮小しています。

ロボット新時代というテーマは確かに大きい。ソフトバンクグループは米家事ロボットの1Xテクノロジーズに出資しており、来年後半にはスイスABBのロボット事業会社「ABBロボティクス」を買収する予定です。ファナックはフィジカルAIの主力株として市場から認知されています。日経ヴェリタスもこの日、「フィジカルAIの急速な普及でロボット市場が膨張する」と特集を組みました。誰もが「完成品を作るメーカー」に目を向けている。

実際の受益者:部品メーカーという静かな勝者

ところが、ロボット産業の拡大で最も安定した恩恵を受けるのは完成品メーカーではないかもしれません。

ロボットの心臓部に当たる減速機。モーターの回転力を大きな力に転換するこの部品なしに、ロボットは精密な動作ができません。世界シェアで高い地位を占めているのはナブテスコとハーモニック・ドライブ・システムズです。関節部分の回転に不可欠なベアリングではミネベアミツミが強い。ミネベアミツミはこの日、レアアース関連銘柄として大幅反発しています。

完成品メーカーには競合が増えます。中国の智元ロボティクスがこの日、海外展開拡大とレンタルサービス開始を発表しました。ヒューマノイドロボット分野では中国が国策として猛追しており、完成品の価格競争は避けられない。一方、減速機やベアリングはロボット1台ごとに必ず搭載される消耗品に近い部品です。台数が増えれば増えるほど需要が積み上がる。完成品メーカーのような顧客獲得競争とは無縁です。

パナソニックホールディングスはこの日、100万円以下で購入できる個人向けiPS細胞製造装置「マイiPS」を発表しました。再生医療という全く別の分野ですが、「装置・部品で市場の拡大を捉える」という発想は同じです。市場そのものを賭けるより、市場の拡大に必要なインフラを供給する側に回る。これが今日の相場が示していたもう一つの読み方です。

この優位はいつまで続くか

部品メーカーの優位には条件があります。代替技術が登場しないこと、そして日本勢がシェアを守り続けることです。

減速機については現時点で中国製の精度が日本製に及ばないとされています。ただし、5年、10年のスパンでは追い上げは現実的なシナリオです。智元のような中国勢がロボット量産を加速すれば、国産部品への需要が先に生まれ、その後に日本サプライヤーへの圧力となって返ってくる可能性があります。

4000兆円という数字は2050年の話です。市場が本格拡大するまでの間、完成品メーカーの株価はテーマ相場として先行します。部品メーカーは業績が実際に積み上がる局面で買われる。この時間差をどう見るかが投資判断の核心になります。

証拠となる数字は、来週以降に出るファナックとディスコの決算です。AI・ロボット向け需要がどの程度実績に反映されているかを確認することで、テーマが実需に転換しているかどうかが見えてきます。ファナックの受注残高がポジティブサプライズなら完成品優位の流れが続く。逆に会社側が慎重な見通しを示せば、投資家の目線は部品サプライヤーの安定成長に移っていくでしょう。4000兆円の市場をめぐる競争は始まったばかりで、今日の株価上昇は「誰が勝つか」ではなく「どの局面を今買うか」という問いを立てています。

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