三菱重工受注見通しを上方修正|利益の次に何が伸びる?

· Nikkei

利益急増の内訳

三菱重工業の今回の決算は、純利益が前年同期比97.4%増という派手な数字だけで読むと、円安による一時的な上振れに見えます。実際、前年同期の1ドル146円に対し、今回は157円。為替差益は利益を押し上げました。

ただ、今回の本当の変化は、利益よりも先に受注の見通しが動いたことです。三菱重工は2027年3月期の受注高を、6兆8000億円から7兆円へ引き上げました。上積みの内訳は、ガスタービンと防衛事業がそれぞれ1000億円です。

第1四半期も、売上高は1兆1942億円と15.5%増えました。ガスタービン・コンバインドサイクルや原子力が伸び、航空・防衛・宇宙も工事の進捗で増収となっています。つまり、今回の利益急増は円安だけではなく、エナジー事業を中心とした受注と売上の積み上がりが同時に表れた結果です。

収益の中心を読み替える

直近のニュースでは、三菱重工はH3ロケットでispaceの月面着陸船を打ち上げる会社として、あるいは防衛・宇宙の技術企業として語られていました。前日には、Green AIと組み、工場の省エネや脱炭素をコスト削減と結びつける協業も発表しています。こうした話題は三菱重工の広がりを示しますが、今回の決算が明らかにした収益の中心は、もっと足元にある発電設備と防衛受注です。

特に生成AIの普及は、データセンターの電力需要を通じて発電所用ガスタービンの需要を押し上げています。ここで三菱重工に届くのは、AIサービスの売上そのものではありません。データセンターを動かすための電力設備を、誰が、いつ、どの地域に建設できるかという投資の現場です。

需要の強さと制約

この需要がそのまま三菱重工の利益になるわけではありません。タイのデータセンター投資では、最大500メガワットを求める案件がある一方、150メガワット規模でも送電網の制約で待たされるケースが報じられています。電力や水が足りなければ、データセンター事業者は設備を発注できず、三菱重工も受注を売上へ変えるまで時間を要します。AI需要は強い。しかし、電力インフラがボトルネックになるという反対側の現実もあります。

防衛も同じです。防衛省は無人機や衛星のデータをAIで分析するため、防衛機密を民間クラウドで扱う準備を進めています。ただし、安全基準は整備途上で、必要な性能のクラウドは米巨大IT企業に実質的に限られるとされています。防衛予算や新しい戦い方が広がっても、それが直ちに三菱重工のミサイル売上になるわけではありません。今回も、ウクライナから具体的な協力要請がある状態ではないと会社側は説明しています。

保有者が確認する数字

だから、保有者が見るべきなのは、97%増という過去の利益だけではありません。7兆円の受注が実際の売上に変わるか、通期で6000億円とされたフリーキャッシュフローを稼げるか、そして通期純利益見通し3800億円を超えていくかです。会社は受注を上方修正した一方、業績予想は据え置き、アナリスト平均の利益予想には届いていません。

三菱重工はいま、円安で利益が膨らんだ重工株から、電力需要と防衛投資を受注に変える会社へ読み替えられる局面にあります。ただし、その変化はまだ受注の段階です。データセンターの電力制約、中東情勢、レアアース規制、そして受注を現金に変えるまでの時間が残っています。次に確認すべきなのは、7兆円という数字の大きさではなく、その受注が本当に売上とキャッシュフローとして現れ始めるかどうかです。

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