円買い介入4兆円なのに外国人が買い続けた日|ドル建て日経400ドル突破の謎は?
日経3320円高の裏で、為替介入がもう一つの相場を動かしていた
5月7日、日経平均株価は終値で3320円72銭高の6万2833円84銭を記録しました。上昇幅は2024年8月6日の3217円を超え、史上最大となりました。その同じ日、政府・日銀が大型連休中に追加で行った円買い介入は4兆円から5兆円規模に上ると市場が推計しています。4月30日の5兆円規模に続く、異例の連続介入です。
通常、円高は日本の輸出企業の収益を圧迫し、日本株にとってマイナス要因とされています。ところがこの日、ドル建て日経平均は前営業日比6.2%高の401.8ドルと、400ドルの大台に初めて乗せ、過去最高値を更新しました。介入で円高が進んだにもかかわらず、外国人投資家から見た日本株の運用成績は、円建てよりも高い伸び率を示したことになります。
東証プライム市場では約75%の銘柄が上昇しました。ソフトバンクグループ(9984)がストップ高の6424円、キオクシアホールディングス(285A)が19.2%高でストップ高、東京エレクトロン(8035)も大幅高となり、この3銘柄だけで日経平均を1700円近く押し上げました。連休中の米国市場ではAMDの好決算、ソフトバンクG傘下のアームの市場予想超え決算、ナスダック総合指数とS&P500指数の連日最高値更新が相次ぎ、7日、待機資金が一気に流入しました。米国とイランの戦闘終結に向けた覚書合意が報じられると、NY原油先物は一時88ドル台へと急落し、エネルギーコスト上昇への懸念が後退しました。一方、INPEX(1605)は267円安と急落しており、同じ相場の中で真逆の動きが同時進行していました。
円高なのに外国人が買い増した理由——ドル建て最高値が意味すること
為替介入と株高が同時に起きたとき、投資家は通常どちらかを選びます。円高で輸出企業の利益が目減りするなら株を売る、という判断が一般的です。しかし7日の東京市場では、介入による円高がむしろ買いを呼び込む機能を果たしました。
外国人投資家は日本株をドルに換算して損益を計算します。日経平均が5.6%上昇し、同時に円が対ドルで上昇すれば、ドル換算のリターンはその両方が上乗せされます。7日のドル建て日経平均が6.2%上昇したのは、株高5.6%に円高分が加算されたためです。介入で円が強くなるほど、外国人投資家にとって日本株の含み益はドルベースで膨らみます。
MUFG(三菱UFJフィナンシャルグループ、8306)が同日、米グーグルとのAIエージェント開発提携を発表したことも、投資家の関心を金融セクターに向けました。個人向け金融サービスへのAI導入という新たな収益源として評価されました。
ここで一つの条件が浮上します。この自己強化ループ——円高→外国人の含み益拡大→追加買い→株高——は、円高の進行速度が急すぎると逆転します。連休中に円相場が1ドル155円台前半まで急騰した局面では、輸出企業の通期業績見通しへの懸念も同時に高まりました。トヨタ自動車(7203)やソニーグループ(6758)の決算は8日以降に予定されており、想定為替レートと現実の乖離がどの程度業績を圧迫しているかは、まだ明らかになっていません。
400ドルを維持できるか——二つのシナリオと明日の確認点
ドル建て日経平均が400ドルの大台を維持するシナリオは、外国人買いの継続にかかっています。過去に似た構図が生じたのは、2013年のアベノミクス初期でした。当時は円安と株高が同時進行し、外国人買いが日経平均を短期間で大幅に押し上げました。ただしあの時は円安が追い風で、今回は円高です。外国人の需要が株高を牽引している点は共通していますが、収益の押し上げメカニズムは真逆です。この違いが今回の構図を特異にしています。
継続シナリオの条件は二つあります。中東の停戦合意が正式に締結され、原油価格が安定すること。そして8日以降に相次ぐトヨタ、ソニーといった主要企業の決算で、円高の業績影響が市場予想の範囲内に収まることです。ドル建て日経平均400ドルという水準が現実的な基準として機能するかどうかは、この決算シーズンで試されます。
崩れるシナリオでは、円相場が1ドル150円を割り込む水準まで円高が加速した場合、輸出企業の業績圧迫が鮮明になり、円建て株価の下落圧力が強まります。ハイテク株偏重への警戒感も残っています。ソフトバンクG、アドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)の3銘柄で日経平均の上昇分の半分以上を占める状況は、この3銘柄が下落に転じた場合の反動リスクを内包しています。
明日確認すべき数字は二つです。円相場が1ドル155〜156円台の介入警戒圏を維持するか、それとも政府・日銀がさらなる介入に踏み切るか。そしてトヨタの決算で示される想定為替レートが、現在の円相場と大きく乖離していないかどうか。ドル建て日経400ドルが単日の現象で終わるのか、それとも外国人買いの新たな基準になるのか——その答えは、為替と企業決算が同時に示すことになります。