利上げ観測後退|ユーロ円27年ぶり高値

· Nikkei

日銀が動けない理由

ユーロ円が187円90銭まで上昇しました。1999年のユーロ導入以来、27年ぶりの最高値です。豪ドル円は114円30銭台に乗せ、1990年以来36年ぶりの高値を更新しました。

ここに矛盾があります。日銀は今年1月と3月に利上げを実施し、市場は4月の追加利上げも織り込みつつありました。利上げが進めば円高になるはずです。それがなぜ、円は今日これほど売られたのでしょうか。

きっかけは植田日銀総裁の発言でした。G20財務相・中央銀行総裁会議で植田総裁は「中東情勢の経済への影響はかなり不透明」と述べ、原油高に伴う物価上振れリスクと景気下振れリスクが同時に存在するため「政策対応は非常に難しい」と明言しました。この一言で、4月利上げ確率はオーバーナイトスワップ市場で15%台にまで急低下しました。わずか数日前まで60%前後で推移していた数字です。

英欧など主要中央銀行が軒並み今月の政策変更を見送る見通しとなる中、日銀も足並みを揃えるとの見方が急速に広がりました。結果として円売りが加速し、ドル円は159円48銭まで上昇。みずほ、三菱UFJなど銀行株にも利上げ延期の失望売りが出て、日経平均の下落に追い打ちをかけました。

円安が止まらない構造

ここで問うべきは「なぜ今日利上げ観測が後退したか」ではありません。「なぜ日銀は利上げ観測が後退すると、これほど大きく円が売られるのか」という別の問いです。

東洋経済オンラインはこの構図を以前から指摘していました。日米の実質金利差を巻き戻すには、日本の長期金利が2%以上にならなければ足りない、という試算です。現在の日本の10年国債利回りは1.5%前後。日銀が利上げを進めても、高市政権のリフレ期待が長期金利の上昇を打ち消す方向に働いています。財政拡張への期待が続く限り、名目金利が上がっても実質金利差の縮小は限定的なのです。

さらにホルムズ海峡の緊張が別の経路で円安を助長しています。米エネルギー長官が石油大手に増産を要請したとブルームバーグが報じましたが、エクソンモービルやシェブロンなど大手各社は数ヶ月後の価格急落を見込み、新規掘削投資に消極的な姿勢を示しています。NY原油先物は93ドル台で推移。原油高は日本にとって純粋な輸入コスト増であり、経常収支の悪化を通じて円安圧力を加えます。信越化学工業が本日、シリコーン全製品を5月出荷分から10%以上値上げすると発表したのも、この原油・ナフサ高騰の直接的な結果です。利上げが遅れる一方でインフレが輸入コストから広がるという組み合わせは、円にとって最も不利な環境です。

円安の転換点はどこか

今後のシナリオは二つに分かれます。

一つは、円安がさらに進む経路です。4月27〜28日の日銀金融政策決定会合で利上げが見送られ、かつホルムズ海峡の緊張が続けば、ドル円は160円台への上昇を試す展開が現実味を帯びます。みんかぶの予想レンジはすでに159円〜160円20銭に設定されており、為替市場は160円台乗せを次の焦点と見ています。この場合、当局によるドル売り・円買い介入の有無が最大の注目点となります。今週のG7財務相・中央銀行総裁会議での片山財務相の発言に目を向ける必要があります。

もう一つは、日銀が予想外に踏み込む経路です。植田総裁が4月会合で「物価上振れリスクを優先する」姿勢を示せば、利上げ確率は一気に再上昇し、円売りポジションの巻き戻しが起きます。現在の円安は短期的な利上げ観測の後退によって増幅されている部分が大きく、サプライズがあれば振れ幅も大きくなります。

証拠の重みは最初のシナリオに傾いています。ただしそれが成立するには、ホルムズ情勢が悪化し続けるか、少なくとも停戦への道筋が見えないままでいる必要があります。4月21日の停戦期限と、同27〜28日の日銀会合。この二つのイベントが重なる来週が、円相場の方向性を決める分水嶺になります。

明日の検証ポイントはドル円の160円台突破の有無です。突破すれば当局の姿勢が試され、介入か黙認かが次の相場を決めます。突破しなければ、植田発言の影響は一時的だったという解釈が広がり、利上げ観測が静かに戻ってくる可能性があります。

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