原油100ドル突破|日本株金利決算の三つ巴

· Nikkei

原油と日本株の分岐

ブレント原油が1バレル100ドルを超えた日、日本株は4日ぶりの反落となりました。一見すれば単純な構図です。しかし同じ日、米国市場ではS&P500とナスダックがともに最高値を更新していました。なぜ米国株が上がり、日本株が下がったのか。その答えは原油価格そのものではなく、原油が引き起こす二次効果にあります。

中東情勢の緊迫化によって原油先物が買われ、インフレ懸念が再燃しました。東京市場では長期金利が2.420%まで上昇し、日銀の国債買い入れオペも弱い結果となりました。国内債券市場では「中東情勢が改善するとの期待が後退しており、積極的に買いを入れにくい地合い」という声が聞かれました。金利が上がれば、グロース株の割引率が高まります。東証グロース指数は大幅続落となり、日経VIは取引時間中に一時上昇しました。

ドル円は159円台半ばで推移しました。午前中にイランでの爆発報道を受けて159円70銭近辺まで上昇しましたが、「訓練によるもの」と判明すると買いが巻き戻されました。それでも原油価格を眺めながら159円台を維持し続けました。円安と原油高が同時に進む状況は、輸入コストの二重加圧を意味します。ENEOSホールディングスやINPEXは大幅反発となりましたが、これはエネルギー輸送停滞の長期化懸念が背景にあります。エネルギー株が恩恵を受ける一方、コスト高で打撃を受ける製造業やグロース株との分岐が鮮明になっています。

金利と決算の衝突

原油高が金利を押し上げる動きは、日本国内の決算シーズンと正面から衝突しています。この衝突が今日の市場を複雑にした本質です。

十六フィナンシャルグループは26年3月期の経常利益を23%上方修正し、11期ぶりに過去最高益を更新する見通しとなりました。SBI新生銀行も純利益が34%増となり、2001年3月期以降で最高益の見込みです。日銀の利上げが銀行の利ざやを改善し、資金利益や政策保有株式の売却益が膨らんでいます。金利上昇は銀行株にとって追い風です。

しかし同じ金利上昇が別のセクターには逆風となっています。超長期債の利回りは40年債で3.825%まで上昇しました。明治安田生命が超長期債を数千億円積み増すと発表したのは「今が良い頃合い」という判断からですが、これは金利がさらに上がる前に買っておくという機関投資家の動きであり、現在の金利水準がピークではないという見方が広まりつつあることを示しています。

野村総合研究所は26年3月期の最終利益が前期比84%減となる見通しを発表しました。豪州と北米の事業計画を見直し、のれんなどで969億円の減損を計上するためです。東京エネシスが経常利益を34%上方修正する一方、野村総研が84%の最終減益となる。これが今の日本市場の断面図です。上方修正と下方修正が同時に走る決算シーズンは、個別銘柄の選別が一段と重要になる局面を示しています。

防衛と技術安全保障

金利と決算の混乱の中で、市場が静かに注目している流れがあります。日本政府が外為法に基づいて、アジア系投資ファンドMBKパートナーズによる牧野フライス製作所の買収を中止するよう勧告しました。40年前の「東芝ココム事件」を教訓とした技術安全保障上の判断です。

工作機械はあらゆる部品を生み出す基盤技術であり、精密加工は兵器性能のコアです。政府が外資取得に拒否権を発動したのは異例ではありませんが、この決定は日本の防衛産業政策が新たな段階に入ったことを示しています。三菱重工はボーイング決算の好感という材料も重なり大幅反発となりました。テラドローンは連日の年初来高値を更新し、防衛関連として物色が続いています。

問題はこうした動きがどこまで持続するかです。原油価格が100ドルを維持するなら、エネルギー安全保障への関心が高まり、防衛・エネルギー関連銘柄への資金流入は続く可能性があります。しかし金利上昇が続けば設備投資コストが上がり、防衛産業の調達コストも膨らみます。国内工作機械受注については「国内自動車底ばい、回復に要時間」という見方が示されており、防衛需要がこのギャップを埋められるかはまだ確認できていません。

今後の検証ポイントは二つです。一つは明日以降に発表される製造業の決算で、為替と原油の二重コストをどう見通すか。もう一つは原油が100ドル水準を維持するかどうか、中東情勢の展開です。これらが同時に悪化すれば日本株への圧力は今日の水準を上回ります。逆に原油が落ち着き、銀行・防衛関連の決算改善が広がれば、日経平均は再び6万円台を視野に入れることになります。どちらの方向に振れるかは、週末にかけての原油と国内金利の動きが教えてくれるはずです。

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