巨大ITのAI投資加速|止まらない削減と市場の動揺

2026-04-24 · Nikkei

AI投資と人員削減の矛盾

メタが8,000人の人員削減に踏み切り、マイクロソフトも米国従業員の約7%にあたる8,700人規模の早期退職優遇制度を提示しました。わずか1週間で合計2万3,000人以上のポジションが削減される一方、両社は過去最大規模のAI投資を継続しています。マイクロソフトの2026年度の設備投資額は、前年比66%増となる1,100億から1,200億ドルに達する見通しです。経営陣が人員削減と過去最高の支出を同時に発表するこの矛盾は、現在のAI優先のビジネスモデルを象徴しています。

マイクロソフトのクラウド部門「アジュール(Azure)」の直近四半期の売上高は前年同期比39%増、受注残は110%増の6,250億ドルに達しており、AI投資は着実に成果を上げつつあります。今回の早期退職は、年齢と勤続年数の合計が70以上のシニアディレクター以下を対象としており、単なるコスト削減ではなく、AI主導の運営モデルへの組織再編といえます。発表を受けて同社株は4%下落し、年初来の下落率は約14%となりました。アナリストの多くは依然として「買い」を推奨し、目標株価のコンセンサスは580ドル近辺ですが、市場は利益率への圧迫が表面化することを警戒しています。

ソフトウェア株の連鎖下落

マイクロソフトのニュースと同じ日の午後、サービスナウの決算を受けてエンタープライズ・ソフトウェア・セクターが急落しました。サービスナウが18%安、セールスフォースが特段の材料がないなか9%安となるなど、クラウド関連銘柄は数カ月ぶりの安値を付け、ナスダック・ソフトウェア指数は2025年初頭以来の最悪の週間騰落率を記録する勢いです。

サービスナウ急落の背景には、中東情勢によるイラン関連の紛争の影響でオンプレミス案件の契約締結が遅延し、サブスクリプション収益が0.75%押し下げられたことがあります。さらに、77億5,000万ドルを投じたアーミス(Armis)買収に伴うコストが利益率の見通しを圧迫しました。ゴールドマン・サックスやジェフリーズなどは相次いで目標株価を引き下げ、サービスナウの株価は年初来で45%の下落となりました。焦点は、AIによる生産性向上が期待されるなかで、なぜ案件の停滞や利益率の悪化が起きているのかという点にあります。5月4日のアナリスト・デーで、経営陣はAIの収益化やアーミスの統合、中東の案件動向について明確な回答を求められることになります。

原油高騰と半導体株の明暗

ソフトウェア株が売られる裏で、市場では二つの対照的な動きがありました。中東情勢によるホルムズ海峡の緊張で原油価格は1バレル100ドルを突破し、米国のインフレ率は2年ぶりの高水準を記録しました。ユナイテッド航空は通期利益予想を下方修正し、夏季の運賃が最大20%上昇する可能性を警告。ルフトハンザも2万便の欠航を決定するなど、エネルギーショックはあらゆるコスト構造を侵食しています。

一方、木曜引け後に発表されたインテルの決算は、半導体セクターの不安を一掃しました。売上高と1株利益(EPS)がともに市場予想を大きく上回り、第2四半期のガイダンスも強気な内容となったことで、同社株は時間外で15%急騰。AMDやARMも連れ高となりました。インテルのタンCEOは、AIモデルの「学習」から「推論」や「エージェント」への移行が、CPUや先端パッケージング需要を押し上げていると指摘しました。

現在の市場は、バリュエーションの再評価が進むソフトウェアと、堅調なハードウェアに二極化しています。4月29日に予定されているマイクロソフトとアルファベットの決算で、クラウド部門の成長率が35%を維持できるかが、この「AIインフラ・トレード」の持続性を占う重要な分岐点となります。もし下振れれば、今回のソフトウェア株の下落は一時的なものではなく、市場全体の広範な調整の始まりとなる可能性があります。