日本製鉄USスチールで上方修正|利益改善は定着する?

· Nikkei

上方修正の中身

8月4日、日本製鉄は今期の純利益予想を2200億円から2900億円へ、事業利益予想を5300億円から6300億円へ引き上げました。4〜6月期も事業利益1455億円、最終損益752億円の黒字です。ただし、これは国内需要が一気に回復したという話ではありません。読み方の中心は、昨年買収したUSスチールが想定以上に利益へ寄与し始めたことです。

米国事業が数字を動かす

日本製鉄の売上収益は今期11兆2000億円へ上方修正されました。会社側の説明では、米国の鋼材市況とUSスチールの収益改善施策が上振れ要因です。さらに在庫評価差益の拡大も利益を押し上げました。つまり今回の上方修正は、買収効果が遠い将来に出るという期待だけでなく、米国事業が今期の数字を動かし始めたことを示しています。

米国市場の追い風

その背景には、米国の鉄鋼市場そのものの変化があります。米鉄鋼大手では、関税によって海外材が入りにくくなり、AIインフラ向けの建材需要も加わって、鋼材価格が過去1年で約3割上昇しました。米国の鉄鋼会社の利益が倍増したという報道もあります。ここからは解釈ですが、日本製鉄がUSスチールを通じて受け取る恩恵は、単なる買収後のコスト削減ではなく、関税と需要増によって押し上げられた米国市場の価格環境にも支えられています。

長期ストーリーの前倒し

これまでの見方は、もっと長い時間軸でした。SMBC日興証券は7月29日、日本製鉄の目標株価を710円から740円へ引き上げ、USスチールの投資効果や、インドの合弁会社AM/NSインディアの増産を2030年3月期に向けた材料として挙げていました。国内事業については、内需停滞や日本材への保護主義的な動きで苦戦すると見ていました。今回の決算は、その長期ストーリーの一部が、想定より早く米国事業の利益予想に表れたと整理できます。

強さの持続性を問う

ただ、これをそのまま構造的な高収益化と呼ぶには材料が足りません。鋼材価格の上昇は関税やAIインフラ需要に左右されますし、在庫評価差益も同じ規模で毎期続くとは本文からは確認できません。米国市場の追い風が弱まったとき、USスチールの改善施策だけで利益水準を維持できるのかは、まだ分かりません。今回の数字は強い一方で、その中身には市況要因と一時的な評価益が混ざっています。

将来需要の観察対象

一方で、より長期の構造変化の芽もあります。日本製鉄のGXスチールは、国土交通省のグリーン鉄試行工事の一部に採用されました。政府は2026年度以降に試行範囲を広げ、2030年以降の公共工事で本格活用する方針です。ただし、現時点でこの採用が日本製鉄の売上や利益をどれだけ増やすかは、本文からは分かりません。これは現在の上方修正を説明する材料ではなく、将来の需要を見極める別の観察対象です。

利益の柱は増えるか

保有者が考え直すべきなのは、今回の上方修正を「日本製鉄全体の利益体質が変わった」と一括りにしないことです。米国の鋼材価格、USスチールの収益改善が続くか、在庫評価差益を除いても事業利益が伸びるかを見る必要があります。これから買う人にとっては、国内需要の回復を待つ銘柄というより、米国の保護政策と市場価格、そして買収後の改善を同時に引き受ける銘柄になっています。SMBC日興証券が示した見通しでは、USスチールの上振れに加え、インドの新高炉が2028年3月期以降に稼働し、2029年3月期以降に本格寄与するとされています。そこまで利益の柱が増えるかどうかが、今回の上方修正を一時的な追い風から持続的な転換へ変えられるかの分かれ目です。

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