日経平均最高値でTOPIX反落|AI集中2銘柄が71%下落を隠した日

· Nikkei

6万7000円の日に、1100銘柄が売られた

6月1日、日経平均株価は604円高の6万6934円で引け、連日の史上最高値を更新しました。一時は6万7000円台まで上昇し、市場全体が沸き立つように見えました。しかし同じ日、東証プライム市場で値下がりした銘柄は1115銘柄、全体の71%に達しました。

ソフトバンクグループ(9984)が前日比14%高の8541円に急騰し、トヨタ自動車を抜いて国内時価総額首位に立ちました。キオクシアホールディングス(285A)は6650円高の7万2500円と3連騰で新値街道を走り、売買代金は市場でダントツの1位を記録しました。東京エレクトロン(8035)、村田製作所(6981)、太陽誘電(6976)も大きく買われ、AI・半導体関連の主力株が日経平均を押し上げました。

一方でTOPIXは反落しました。全体売買代金は11兆9000億円台と活況でしたが、アドバンテスト(6857)、レーザーテック(6920)、ファーストリテイリング(9983)、三菱電機(6503)には売りが集まりました。内需系・非AI関連銘柄への売りは午前から継続し、「リターンリバーサルの動きは鳴りを潜めた」と市場関係者は述べています。指数の表示と市場の実態は、同じ日に真逆の方向を向いていました。

2銘柄が指数を作り、1100銘柄が置き去りにされた理由

日経平均は225銘柄で構成されますが、値がさ株の寄与度が高い加重方式です。ソフトバンクグループ1銘柄で日経平均を数百円単位で動かせる構造の中、同社が14%急騰した日の日経平均は自動的に大幅高を記録します。しかしTOPIXは時価総額加重型のため、1115銘柄が売られれば素直に反落します。

この日の資金フローが向かった先は明確でした。ソフトバンクGはフランスに最大750億ユーロ(約14兆円)のAIデータセンターを建設すると発表し、傘下のアーム(ARM)の株価上昇と合わせて「AIインフラ投資会社」としての再評価が進みました。キオクシアは翌2日のインベスターデーで初配当・株式分割・米国上場という株主還元策の発表が期待されており、外資系証券は格上げと目標株価引き上げを立て続けに出していました。この2銘柄に対して、機関投資家が先行して動き、個人投資家がそれを追う形でポジションを積み上げた構図が、売買代金の集中に表れています。

ここで問題になるのは、「この資金がAI・半導体2銘柄から他に波及するかどうか」という点です。今日の市場では波及しませんでした。代わりに起きたのは、売買代金を稼ぐためにポートフォリオの他の銘柄を売る動きでした。日経平均寄与度の高い値がさ株を買う資金を捻出するために、非AI内需株が売られた可能性を、TOPIX反落というデータは示唆しています。

ただし、この解釈には前提があります。「1100銘柄の売りは資金の再配分によるものだ」という見方は、売り手が同一の国内機関投資家であることを前提にしています。外国人が2銘柄を集中買いし、国内の別の参加者がリバランス売りをしているとすれば、2つの全く独立した資金フローが重なった結果にすぎません。今日の外国人ネット売買データはまだ確認できません。

TOPIXが反落し続ける条件と、指数の嘘が解ける条件

キオクシアは2日夕のインベスターデーが目前に迫っています。初配当・株式分割・米国上場という3つのIRイベントが実現した場合、時価総額は現在のソフトバンクGをさらに超えるとの見方も市場で出ています。この期待が当日どこまで現実に着地するかが、短期の資金方向を決める検証点です。

フラット35の6月適用金利が2017年以来初めて3%を超え、3.21%に達したというニュースが同日に流れました。長期金利の上昇は、TOPIXの中で不動産・建設・金融セクターの採算計算を直接変える変数です。AIと無関係なこのセクターが、金利上昇への再評価で戻り局面に入るかどうかは、TOPIX反落が続くかどうかを決める重要な要因の一つです。

日経平均が最高値を更新し続ける局面で、TOPIX反落が続くパターンは過去にも見られました。2015年のチャイナショック前夜、日経平均は一部の値がさ株主導で高値を維持しながら、TOPIXは先に天井をつけていました。このときの市場実態は後から「指数の分断」として語られましたが、当時のリアルタイムでは指数を見ていた参加者の多くがその乖離に気づくのが遅れました。

2銘柄への資金集中がいつまで持続するかの検証基準は、キオクシアのインベスターデーの内容と、SBGの仏データセンター計画の具体的な資金調達スキームが明らかになるタイミングです。期待に対してサプライズが少なければ、利食いが一気に出る可能性があります。その場合、日経平均は値がさ株の急落で大幅に下落し、逆にTOPIXの相対的な底堅さが確認される展開もあり得ます。

一方、AIデータセンター投資の規模が想定以上に拡大し、ARM・キオクシアという半導体バリューチェーン全体への買いが波及するならば、今日値下がりした電子部品株や非AI素材株にも資金が流れ込み、日経平均とTOPIXが同方向に動く局面が来るかもしれません。

どちらのシナリオが先に現れるかは、今日の乖離が「一時的なポジション偏重」なのか「市場構造の恒常的な変化」なのかという、まだ答えが出ていない問いにかかっています。

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