日経平均 初の6万円台|AI決算が変えた相場の構造

· Nikkei

AI半導体が6万円を開いた

4月27日、日経平均株価が終値ベースで初めて6万円の大台に乗せ、史上最高値を更新しました。上昇幅は821円。しかしこの数字の内側を見ると、6万円突破の立役者がほぼ2社に絞られていたことがわかります。アドバンテストとファナックの2銘柄だけで指数を411円押し上げました。上昇した銘柄は225銘柄中54銘柄にとどまり、東証プライムでは値下がり銘柄が値上がりを上回って引けています。

なぜ2銘柄がこれほどの力を持ったのか。アドバンテストは27日引け後に発表した2027年3月期の業績予想で、純利益が前年比24%増の4655億円になるとの見通しを示しました。前期の純利益は前の年の2.3倍に拡大しており、AI向け半導体検査装置の市場シェアは65%にまで広がっています。SOC向けテスタ市場は前年69億ドルから最大95億ドルへの成長を見込んでいます。需要の拡大に伴い、設備投資も前年比31%増の450億円、研究開発費は28%増の1000億円という強気の計画です。

ファナックも同様に、26年3月期の連結営業利益が前期比16%増の1838億円となり、中国での工作機械とロボットの需要増が追い風になりました。さらに500億円の自社株買い枠を新設したことが買いを呼び込みました。キーエンスは26年3月期の営業利益が8%増で市場コンセンサスを上回り、定款変更による自己株式取得の解禁が思惑を呼んで一時ストップ高となりました。

この3社に共通するのは、AI投資の実需が数字となって現れたことです。製造現場のAI化、フィジカルAIと呼ばれるロボット知能の高度化、半導体の複雑化に伴う検査工程の増加——それぞれ異なる経路で、同じAI投資の波に乗っています。米国でのGAFAM決算が半導体株を下支えしている構図が、東京市場にも直接波及した形です。

日銀とイランが作る二重の天井

しかし6万円台を維持できるかどうかは、まったく別の問題です。上昇を押し上げた力と、上昇を抑える力が同時に働いています。

まずイラン情勢です。米国とイランによる和平協議は停滞が続いており、ホルムズ海峡の封鎖状態は解消されていません。原油価格は1バレル95ドル台で高止まりしています。この日の東京市場でも、「イラン情勢改善の観測」という報道が伝わると株価が一段高となり、その後不透明感が戻ると上げ幅が縮小するという動きが繰り返されました。午後には一時1100円超の上昇を記録しながら、引けにかけては821円高まで縮んでいます。

原油高の影響は対称的ではありません。AI半導体関連企業はアドバンテストが「現時点で直接的な影響は限定的」と述べているように、エネルギー依存度が低い。一方で海運株や医薬品株は下落しており、輸送コストと原材料費の上昇圧力を受ける業種への影響は異なります。同じ日に日経平均が最高値を更新しながら、値下がり銘柄が多数を占めた背景には、この業種間格差があります。

もう一つの変数は日銀です。27日から始まった金融政策決定会合は、利上げ見送りの公算が大きいとの見方が支配的です。当初は利上げを予想していたエコノミストも多くいましたが、イラン情勢の長期化が景気への悪影響を広げる可能性を前に、判断を留保する方向に傾いています。利上げを見送れば円安方向への圧力は続き、ドル円は159円台で推移しています。一方で利上げを実施すれば短期的には円高に振れ、輸出関連株への逆風になります。長期金利は2.465%と2週間ぶりの高水準まで上昇しており、債券市場では利上げの可能性を完全には織り込んでいません。

6万円台を守るための条件

今後の焦点は二つに絞られます。一つは29日のFOMC、もう一つはイラン交渉の進展です。

証拠の重みは現時点でリスクオン継続を指しています。AI決算の実需が確認され、米フィラデルフィア半導体株指数は18日連続で上昇していました。アドバンテストや東エレクの決算は市場予想を上回り、AI投資が実際に利益として結実していることを示しています。この流れが続く限り、半導体関連株への資金集中は続きやすい局面です。

ただし、この判断が有効なのは二つの条件が維持される場合に限ります。一つは原油高が現状の水準にとどまること。もし和平交渉が完全に決裂し、ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、物流コストの上昇と需要抑制が重なり、AI関連企業も設備投資計画の見直しを迫られる可能性があります。もう一つはFOMCでパウエル議長が利上げに前向きな発言をしないこと。任期最後の会合となる今回、インフレへの強い警戒を示すと、6月利上げ観測が高まり、グロース株全体に売り圧力がかかります。

確認すべき指標は明確です。28日のFOMC声明とパウエル議長の会見で「利上げの可能性は排除しない」という表現が入るかどうか。そして、30日に予定されているGAFAM4社の決算でAI設備投資の積み増しが示されるかどうかです。設備投資の増加は短期的に過剰投資懸念を呼ぶリスクがある一方で、アドバンテストのような検査装置メーカーにとっては追い風になります。

反対シナリオが現実になるとすれば、こんな形です。FOMCが利上げ示唆、GAFAMが低調な収益見通し、さらにイラン交渉が決裂——この三つが重なれば、6万円台は試練を迎えます。アドバンテストが単独で456円押し上げた日に、同じ力が逆方向に働く局面も、あり得ないとは言えません。

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