日経平均 史上最高値|ソフトバンクG一極集中の死角

· Nikkei

最高値の裏側

22日、日経平均株価が終値ベースで5万9585円と史上最高値を更新しました。しかし東証プライム市場では、実に8割の銘柄が下落していました。最高値更新と市場の広がりのなさ、この矛盾を読み解く鍵は一銘柄にあります。

ソフトバンクグループ(SBG)がこの日、一時前日比10.5%高と急騰しました。時価総額は30兆円台を回復。この1銘柄だけで日経平均を385円押し上げました。アドバンテストと合わせた2銘柄で、指数押し上げ寄与は520円に達しています。日経平均の上昇幅が236円であることを考えると、この2銘柄がなければ指数は下落していた計算になります。

その構造的な偏りを示す数字があります。日経平均をTOPIXで割ったNT倍率が、この日15.91倍と1976年以来の過去最高に達しました。値がさ株の一部だけが市場を引き上げる構図が、記録的な水準に達しています。JPモルガンは同日、日経平均の年末目標を7万円に引き上げました。AI成長の加速を根拠としていますが、その恩恵が一部の銘柄に集中している現実は変わっていません。

半導体製造装置のディスコが引け後に決算を発表しました。前期経常利益は9.5%増の1849億円と過去最高、6期連続増益で着地しました。来期の4〜6月期は生成AI需要を追い風に営業利益が22%増の420億円を計画。四半期ベースで出荷額が過去最高を見込んでいます。ただ、通期業績見通しは「需要予測が困難」として開示を見送りました。AI需要の強さは確かでも、先行きの不確実性は依然として大きいという判断です。

日銀とFOMC待ち

市場が最高値を更新する中、為替はドル・円が159円台前半と節目の160円に再び接近しています。円相場がこの水準に沈む背景には、単純な需給以上の構造があります。

来週に迫った日銀金融政策決定会合(4月27〜28日)とFOMC(4月28〜29日)を前に、市場は身動きが取れない状態です。日銀の4月利上げ確率は、翌日物金利スワップ市場の織り込みで7割程度から8%程度まで急低下しました。背景にあるのはイラン情勢です。米イランの第2回和平協議は期限直前に開催されず、停戦は延長されましたが協議に進展はありません。ホルムズ海峡の状況が正常化しないなか、日銀は「原油高騰による交易条件悪化がサプライチェーンを通じた景気下押しリスクになる」と判断し、利上げを見送る公算が大きいとされています。

米国側でも、FRBのウォラー理事がこれまでのハト派的姿勢を修正しました。「中東情勢の混乱が長期化すれば金利を維持せざるを得ない」と発言し、インフレ再燃リスクへの警戒を示しました。次期FRB議長候補のウォーシュ氏の公聴会でも、タカ派的姿勢が確認されています。日銀が利上げを見送り、FRBが引き締め継続を示唆する組み合わせは、円安バイアスを強化します。「中東情勢が落ち着いても緊迫しても円安」という市場のコンセンサスが、160円への接近を生んでいます。

日銀が動けない最大の根拠は物価の偏りです。エネルギー分野の物価上昇が広範な分野に波及しているかどうか、すなわちBroad-based inflationの兆しが見えるかどうかが焦点です。24日発表の3月全国CPIが一つの判断材料となります。コアCPIがエネルギー以外にも上昇が広がっていれば、6月会合での利上げ再浮上は十分ありえます。

判断の分岐点

今の市場が抱える最大の問題は、シグナルとノイズの分離が難しいことです。日経平均は最高値を更新しましたが、その上昇は1〜2銘柄への集中によるものです。AIサイクルの恩恵は半導体とSBGに集中し、広がりに乏しい。一方でイラン情勢と金融政策の不透明感が、円安持続とセクター輪番を生む構造でもあります。

根拠の重みを総合すると、来週の日銀・FOMC後に向けての蓋然性が高いシナリオは円安継続と株式市場での物色の偏りの持続です。日銀が4月利上げを見送り、FRBがタカ派姿勢を維持すれば、ドル・円の160円接近は現実的です。ディスコの好決算を受けたAI半導体需要の確認は、引き続きソフトバンクGやアドバンテストへの資金集中を支持します。

ただし、この判断が崩れる条件も明確です。米イランの第2回和平協議が開催され、ホルムズ海峡の正常化に向けた具体的進展があれば、原油価格は急落し、インフレ警戒は後退します。日銀が6月会合での利上げを早期示唆すれば円高に転じ、輸出株中心の日経平均は調整圧力を受けます。その場合、TOPIX対比で極端に乖離したNT倍率15.91倍は急速に修正される可能性があります。

明日以降の確認点は2つです。24日の3月全国CPIでコアインフレが広範に上昇しているかどうか。そして、停戦延長期間中に米イラン第2回和平協議の日程が設定されるかどうか。この2点が来週の日銀・FOMC相場の方向性を決めます。NT倍率が15.91倍という歴史的水準にある今、一極集中相場の持続力が問われています。

Link copied