日経平均6万円|史上初タッチで即反落した理由

· Nikkei

史上初の6万円、そして同じ日に反落

4月23日、日本株市場に歴史的な瞬間が訪れました。日経平均株価は午前中に一時6万円の大台に乗せ、史上初めてその水準を記録しました。上昇幅は一時1043円を超え、「日経平均が史上初6万円台、韓国株最高値 ハイテク関連に買い」という見出しが市場を駆け巡りました。

ところが、その日の引け値は5万9388円台。終値ベースでは4日ぶりの反落となりました。

前場終盤から利益確定の売りが流入し、一時は3万7164円台まで急落する場面もありました。高値から安値まで1757円という乱高下。東証プライムの成交代金は1兆4000億円超と史上最高となりましたが、これは買いだけでなく売りの規模も記録的だったことを意味しています。「4日ぶり反落、一時6万円台も利益確定売りが優勢」という引け後の見出しは、朝の興奮とは別世界のトーンでした。

ここで一つの問いが生まれます。6万円という大台を初めて突破した日に、なぜ市場はそれを維持できなかったのか。そして、この日の円相場は株価と全く逆の方向に動きました。

植田発言と円安加速——6万円の日に起きた逆行

日経平均が反落した同じ時間帯、円相場は逆方向に動いていました。植田日銀総裁が「政策対応は非常に難しい」と発言し、4月の利上げ観測が急速に後退しました。ユーロ円は1999年のユーロ導入以来の最高値を更新し、豪ドル円は1990年以来の高値まで上昇。4月利上げの確率は15%台にまで低下しています。

株安と円安が同時に進行しました。一見矛盾しているように見えますが、実際には別々のメカニズムが作動していました。

株式市場では、6万円という節目を達成したことで「短期的な目標達成感」が広がり、機関投資家の利益確定が一気に流入しました。空売り比率は41.8%まで上昇しており、ショート勢の存在も下押し圧力となっています。

為替市場では、植田発言によって日銀の利上げ時期の後ずれが織り込まれ、日米金利差の縮小期待が遠のきました。「日銀利上げ予告でも終わらない円安、長期金利2%でも足りない」という分析が示すように、金融政策の転換を見込んだ円買いポジションが一部巻き戻された形です。

ただ、ここで問題が生じます。この円安が続くとすれば、円建てで見た企業収益は押し上げられますが、実質購買力の低下は国内消費を圧迫します。輸出企業の恩恵と国内消費の抑制が綱引きするとき、株価はどちらの声を聞くのでしょうか。

さらに、この日は別の動きも見逃せませんでした。政府がアジア系投資ファンドMBKパートナーズによる牧野フライスの買収計画を中止するよう勧告したことが明らかになりました。外為法に基づく安全保障上の懸念による措置です。外資による日本企業買収審査の厳格化が、今後の海外資金流入に見えないフィルターを加えつつあります。

過去の大台突破との比較——6万円は通過点か、上値の壁か

日経平均が過去に大きな節目を初めて突破した際、その後の展開を振り返ると示唆があります。2024年2月に史上初めて4万円台に乗せたとき、その後は数週間の乱高下を経ながら上昇基調を維持しました。5万円台に到達した局面では、マクロ環境の変化と重なり調整が長引きました。6万円という水準は、単なる数字の節目を超えて、市場参加者の行動様式を変える可能性があります。

現在の上昇を支えているのは、半導体サイクルの強さです。「明日の株式相場に向けて=半導体復権へ、沸騰するメモリー関連株」という見出しが示すように、キオクシアやフジクラといった関連銘柄へのマネーの集中は続いています。SKハイニックスがAI向けHBM需要の拡大を背景に四半期ベース過去最高益を記録し、日本のサプライチェーンへの期待も支えとなっています。

この上昇基調が続く条件は、5月に本格化する決算シーズンで主要企業の通期業績予想の上方修正が相次ぐことです。現時点では企業増益期待がマネーを引き付けており、「崩れぬ企業増益期待」が6万円への道を開いたと報じられています。

一方、この流れが崩れる条件も二つあります。一つは、植田総裁の慎重発言が現実化すること——インフレが想定以上に加速し、日銀が早期の利上げを迫られるシナリオです。日米金利差の縮小は円高圧力となり、輸出企業収益の下方修正につながります。もう一つは、停戦延長が崩れ、中東情勢が再び緊張するケースです。現在の上昇はリスク後退を一部織り込んでおり、原油価格の急騰と地政学リスクの再浮上は直接的な下押し要因となります。

今後の確認基準は一つ、来週以降の決算発表で日経採用銘柄の通期営業利益予想が前期比での増加トレンドを維持するかどうかです。シマノが今期経常を5%下方修正したように、全てが上振れではありません。6万円が通過点となるか、上値の壁となるかは、今月末の決算シーズンが答えを出します。

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