日経最高値更新|AI半導体の次に来る波

· Nikkei

AI相場の構造

アドバンテスト1社だけで、今日の日経平均を327円分押し上げました。終値は5万9716円。これは史上最高値の更新です。だが、相場の内側を見ると、値下がり銘柄数は値上がりの1.5倍を超えていました。指数が最高値をつける日に、市場の過半数は下げていた。この矛盾こそが、今の相場の構造を映しています。

起点はニューヨークでした。インテルが市場予想を上回る決算を発表し、半導体セクター全体に買いが波及しました。東京では、アドバンテストとソフトバンクグループの2銘柄だけで日経を473円押し上げました。イビデンも前場から急騰し、一時92円分の寄与を記録しています。AI向けパッケージ基板の需要拡大が、改めて数字で確認された形です。

これに加え、決算シーズンも追い風として機能しています。キーエンスは純利益が12%増となり、5年連続で過去最高を更新しました。アジアと北中南米での販売が堅調で、海外売上は14%増の7792億円に達しています。ファナックもロボット需要の拡大を背景に、来期の純利益11%増を見込んでいます。製造業の設備投資サイクルが、再び上昇局面に入りつつある証左です。さらに、マイクロソフトとメタが合わせて8000人の人員削減を発表しました。AI投資の原資を確保するためです。この動きは短期的には雇用への逆風ですが、半導体需要のさらなる拡大という意味では、日本の関連銘柄にとって中期的な追い風となり得ます。

日銀と原油の挟み撃ち

だが、相場の最高値更新とは対照的に、債券市場ではまったく別の緊張が走っていました。長期金利は2.440%に上昇しています。これは2026年に入って最も高い水準です。

背景にある二つの力が、同時に作用しています。一つは原油です。イランのガリバフ国会議長が、米国との停戦交渉担当から退くと報じられました。中東での戦闘再開が警戒され、WTI原油先物は95ドル台に続伸しています。これが3月の全国CPI(消費者物価)を5カ月ぶりに拡大させました。コア指数は1.8%上昇、予想の1.7%を上回りました。原油高がエネルギーコストを押し上げ、物価の低下幅を縮小させたためです。企業向けサービス価格でも、外航貨物輸送が前年比で大幅な伸びを記録しており、中東情勢の緊迫化が供給コスト全体に波及しています。

もう一つは日銀です。来週、4月30日から5月1日にかけて金融政策決定会合が開かれます。CPI上振れを受け、タカ派的な姿勢が意識される場面が出てきました。これがドル円を160円手前で足踏みさせている主因です。住友生命は今年度も国内債券残高の削減を継続する方針を示しており、「投資妙味はまだ不十分」とコメントしています。機関投資家レベルでも、日本国債に対する慎重姿勢が続いています。

これらを整理すると、株式市場と債券市場がまったく逆のシナリオを同時に値段に織り込んでいることが分かります。株はAI需要の拡大を先取りし、債券は物価上昇による金利上昇リスクを警戒しています。どちらかが間違っているのではなく、どちらの力が先に顕在化するかという問題です。

来週の分岐点

来週の市場を動かす鍵は二つあります。一つは日銀の政策判断、もう一つは中東情勢の進展です。

日銀については、市場参加者の間で「タカ派的な据え置き」が基本シナリオとして意識されています。利上げは見送るが、物価に対する警戒感を示す——そうした声明が出れば、円高方向への動きが加速する可能性があります。ドル円が160円を超えて定着するか、それとも158円台に押し戻されるかが、株式市場にも直結します。円安が続けば輸出企業の収益期待が維持され、日経の高値圏が支えられます。だが、円高に転じれば、海外売上比率の高いアドバンテストやキーエンスには為替の逆風が生じます。

中東については、停戦協議の行方が最大の変数です。原油が100ドルを超えて定着する場合、エネルギーコストの上昇が企業収益に対して均一ではない打撃を与えます。恩恵を受けるのはINPEXなどの資源株ですが、製造コスト上昇は素材・化学セクター全体の圧力になります。

現在の証拠を重みで見ると、AI半導体サイクルの拡大という方向性が最も確度が高いと判断します。来週以降、アドバンテスト・東京エレクトロンなど主要銘柄の決算が控えており、これが相場の方向性を定める試金石になります。ただし、この判断は原油が現状水準にとどまり、日銀会合が市場予想の範囲内に収まることが前提です。原油が100ドルを超え、日銀がよりタカ派的な声明を出した場合、金利上昇が株式のバリュエーションを圧迫し、最高値圏からの調整局面入りも視野に入ります。来週月曜日のアジア市場開場時のドル円水準と、30日の日銀会合声明——この二点が、シナリオの分岐を判断する最初の手がかりになります。

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