日銀CPI見通し2.8%上方修正|利上げ期待で動かない159円の条件

· Nikkei

タカ派シフトの日、市場が描いた乱高下

5月28日の東京市場は、朝から激しい値動きで幕を開けました。日経平均は前場に一時1100円を超える下落を記録しましたが、後場には下げ幅を急速に縮めてプラス圏に浮上し、終値は6万3800円台付近で引けました。この乱高下の震源となったのが、日銀金融政策決定会合の結果と展望リポートです。政策金利は据え置かれたものの、2026年度のCPI見通しは従来の1.9%から2.8%へと大幅に引き上げられ、27年度も2.3%に修正されました。反対票は従来の高田委員1人から田村・中川両委員を加えた3人に増え、執行部の引き締め圧力は明らかに高まっています。一方、東京コンファランスではFRBのジェファーソン副議長がエネルギー高による米経済減速を警告し、ECBのレーン専務理事が供給ショックの長期残存を指摘しました。中央銀行高官が同じ会場で足並みを揃えるように懸念を語った日、ドル円は前場に売られた後、展望リポートのタカ派解釈を受けて円高に転じましたが、159円台前半にとどまりました。

利上げが円高に結びつかない「交易条件の壁」

通常の教科書的な連鎖では、中央銀行が物価見通しを引き上げ反対票が増えれば、利上げ期待が高まって通貨は上昇します。しかしその連鎖が成立するためには、金利差の拡大が資本流入を促すほど国内の購買力が保たれているという前提が必要です。ECBのレーン専務理事は「在庫によって覆い隠されてきたが、エネルギーショックが反転しても二次的影響はしばらく続く」と明言しており、この言葉は日本にとって他人事ではありません。ホルムズ海峡ではイランが「23隻が自国の安全保護のもとで通過した」と発表しましたが、AIS発信機を全船が切っているため実態の確認はできず、封鎖リスクの不透明感は払拭されていません。原油調達コストの高止まりは日本の交易条件を継続的に悪化させており、金利を引き上げても輸入コスト増という円安圧力の根本を消すことにはなりません。ただし、日銀が6月ないし7月に実際に利上げに踏み切った場合、積み上がった円売りポジションの巻き戻しが一気に進んで円高が急進するシナリオは依然として排除できません。利上げの「期待」と「実施」の間には、まだ大きな市場反応の余地が残されています。

6月利上げ判断を左右する二つの分岐点

今後の展開を左右するのは、エネルギー価格とホルムズ情勢の二変数です。ホルムズ封鎖が続き原油が高止まりする限り、2.8%という新たなCPI見通しは輸入インフレに支えられた部分が大きく、日銀が「賃金と物価の好循環」という利上げ条件を満たしたと言い切れない状況が続きます。この場合、ドル円は159円台を挟んだ膠着が継続シナリオとなります。一方、イランとの緊張が何らかの外交的接触で緩和され原油が下落に転じれば、輸入コスト圧力が和らいで日銀の利上げ判断に実需サポートが加わり、円高ブレイクの条件が整います。FRBのジェファーソン副議長が6月FOMCについて「予断しない」と述べた通り、米国側の利下げ開始時期も円高の幅を左右します。検証ベンチマークとしては、ドル円が158円を割り込むかどうかが6月利上げの市場織り込みが進んだサインとなり、逆に160円を再び超えれば2.8%という物価上方修正の利上げ誘導力が限界に達したことを示す数字として記憶されることになります。日銀が次の一手を打つとき、市場は金利差ではなく交易条件の変化を先に読もうとするのかどうか、それが問われています。

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