東京エレクトロン上場来高値|5兆円介入の日に日立超え

· Nikkei

介入5兆円、それでも日本株は上がった

4月30日の深夜、政府と日銀が動きました。規模はおよそ5兆4000億円。円買い・ドル売りの為替介入で、ドル円は一時155円台まで急騰しました。160円を超えていた円安がわずか数時間で5円以上動いた計算です。

通常、これほどの介入があれば翌日の株式市場は動揺します。円高は輸出企業の業績を直撃し、日経平均への売り圧力となるからです。5月1日の東京市場、寄り付きは94円高でスタートしましたが、開始直後に一時マイナスに転じました。「介入後の株安」という教科書通りの動きです。

しかし、そこから違う展開が始まりました。

日経CNBCは「介入より半導体」と見出しをつけました。東京エレクトロンが決算を材料に急騰し、その1銘柄だけで日経平均を大きく押し上げたのです。終値は前日比228円高の59,513円。3日ぶりの反発でした。

ただ、プライム全体では値下がり銘柄が値上がりを上回りました。売買代金は7兆6800億円に膨らんでいます。介入という5兆円規模のイベントがあった翌日に、市場全体の7割以上が下がっていたという事実は、この上昇の「中身」を問い直します。

東京エレクトロンが日立を超えた日

1日の東京エレクトロン株は44,390円から47,450円へ、前日比6.89%上昇しました。上場来高値の更新です。時価総額では日立製作所を上回りました。

背景にあるのは4月30日発表の決算です。2026年3月期は営業利益10%減でしたが、市場予想を上回る着地。さらに今上半期は42%増益という見通しを示しました。韓国・台湾の半導体メーカーが生産を拡大しており、製造装置メーカーである東京エレクトロンへの需要が回復しているためです。

ここに、前日のニューヨーク市場の流れが加わりました。米ハイテク大手が買われ、ナスダックとS&P500が再び最高値を更新していたのです。「AIバブルか」という懸念の声がある一方で、資金はむしろAI・半導体セクターに集中しています。日経CNBCのコメンテーターは「キャタピラーまでAI関連株」という言葉を使いました。

問題は、この上昇が「1銘柄依存」だという点です。東証プライムでは値下がり銘柄が844に対し、値上がりは670にとどまりました。前場でTOPIXがマイナスだったことは、日経平均の数字が示す以上に市場の実態が弱かったことを示しています。

ただし、そこに別の文脈が重なります。5月7日から住友商事が800億円の自社株買いを開始します。同社は1:4の株式分割も発表し、後場に一時ストップ高となりました。TOPIX改革第2弾が10月に控える中、コーポレートガバナンス強化と株主還元の動きは日本株の構造的な底上げ要因として市場に意識されています。日経平均が「数銘柄で作られた上昇」であっても、その下にある資本改革の流れは本物かもしれない。それが今日の市場の分かれ目でした。

介入の翌日に何が見えるか

5兆4000億円の介入は、円相場を数時間で5円動かしました。しかし1日の終値は156円台。介入前の水準には戻っていません。時事通信は「介入でも下落継続の見方 有事のドル買い、貿易赤字で」と報じています。

過去の介入と比較すると、規模はそれほど異例ではありません。2022年10月の介入は推計で約9兆2000億円、2024年4〜5月も総額で9兆円を超えたとされています。5兆円規模の介入で一時的な円高を演出しても、構造的な貿易赤字と「有事のドル買い」という需給が変わらなければ、再び円安に引き戻される可能性は消えません。

日銀は3会合連続で利上げを見送りました。長期金利は一時2.5%超、29年ぶりの水準に達しています。利上げしなければ円安圧力は残り、利上げすれば株式市場への影響が出る。この板挟みは当面続くと見られています。

現在の根拠は東京エレクトロンに代表されるAI・半導体サイクルの回復と、住友商事に見られる企業の資本還元姿勢の強化です。これらが続くなら、日経平均6万円回復への道筋は見えます。ただし、それは「一部の銘柄が相場を引っ張る」構図が崩れないことが前提です。

条件を一つ挙げるとすれば、TOPIXが日経平均の回復についていけるかどうかです。前場でTOPIXがマイナスだったことは、今日すでに一度この懸念が現実になった瞬間でした。もし今後の決算シーズンで中小型株の業績が失望を招けば、日経平均の上昇は1銘柄依存の「砂上の楼閣」になりかねません。

次の確認ポイントは決算ピークが続く来週、そして5月7日の住友商事自社株買い開始後の値動きです。介入5兆円の翌日に東京エレクトロン1銘柄が相場を支えたこの日の光景が、5月相場の縮図なのか、それとも一過性の現象だったのか。その答えはTOPIXが示すことになります。

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