40年債利回り4%突破|製造業7割増益でも株が売られる理由は

· Nikkei

日経平均が失速した日の国債市場

11日の東京市場は、寄り付き直後に6万3300円台まで上昇したにもかかわらず、午後にかけて失速し、終値は前日比120円安の6万2713円でした。7割の製造業が増益決算を発表し、防衛・工場自動化銘柄が業績をけん引する中で、なぜ相場は上値を抑えられたのか。その答えは株式市場ではなく、国債市場に埋まっていました。

40年債利回りが一時4%台に乗せ、3カ月半ぶりの高水準を記録しました。10年債でも利回り上昇が続き、超長期ゾーンへの売り圧力が市場全体に波及しています。表向きの材料は原油高でした。トランプ大統領がイランの和平案への回答を拒否し、中東情勢の不透明感から原油価格が上昇、インフレ懸念が再燃しました。ソフトバンクグループなど半導体関連株の一角が売られ、日銀が為替市況の午後5時時点でドル円157円11〜13銭を記録する中、円安も一段の物価上昇リスクとして意識されました。

これだけ見れば「原油高→インフレ→金利上昇→株安」という整合した流れです。しかしここで問いが残ります。製造業の増益率が7割に達し、東証プライムの売買代金が5月7日に10兆8448億円と過去最大を記録した市場が、なぜわずか4日後に失速するのか。

40年債4%が持つ意味——2024年との違い

40年債利回りの4%超えを単なる「原油高の反応」と読むと、重要な文脈を見落とします。背景条件として見ておくべき事実があります。欧州系大手証券がこの日、任天堂の目標株価を1万2000円から1万円に引き下げましたが、その理由に「メモリー半導体の高騰が製造コストを押し上げる」という点を明示しています。AI投資によるメモリー需要がキオクシアやSUMCOをストップ高に押し上げる一方で、同じ半導体価格の上昇がゲーム機コストを引き上げ、任天堂株を5.2%下落させました。同じ数字が、買い材料と売り材料に同時に機能している日でした。

この構図が、超長期債市場の動きと接続します。日銀はこの日の午後5時時点でドル円相場を確認しており、カシュカリFRB副総裁は同日、イラン情勢の長期化が「インフレリスクと利上げ再考の可能性」をもたらすと警告しました。さらに日銀・ECB・英国中銀・RBAがいずれも利上げ示唆または実施という動きが重なっています。2024年の日本国債市場では、財政懸念から超長期債が急落した場面がありましたが、今回の40年債上昇は財政懸念ではなく「グローバル利上げ再同期」の信号である点が異なります。

2024年との違いは、売り主体です。前回は国内投資家の財政不安が起点でしたが、今回は外部からのインフレ圧力が引き金です。それが意味するのは、日銀が動くかどうかにかかわらず、長期金利が外圧で上昇しうるという状況です。防衛株が増益で買われ、スパークスがトヨタやメガバンクと1000億円規模のファンドを設立したこの日、資金調達コストが静かに上昇し始めていた点が見過ごされやすいところです。

この利回り上昇が続く条件、止まる条件

今後を考える上で、決定的な分岐点は2つあります。一方はイラン情勢の行方で、もう一方は来週以降の日銀の姿勢です。原油価格が現水準を維持またはさらに上昇すれば、輸入インフレ圧力は継続し、40年債利回りはさらに上値を試す展開になります。4%という水準は、年金基金や保険会社の資産負債管理に影響を与えるしきい値でもあり、これを超えて定着した場合、国内機関投資家の株式から債券へのリアロケーション圧力が顕在化しかねません。

逆に、イランと米国の交渉が再開し原油価格が反落すれば、インフレ懸念は後退します。製造業7割増益という実績が改めて評価され、防衛・AI関連を軸とした上昇の続きが見えてきます。スパークスの1000億円ファンドが示すように、ロボット・宇宙・脱炭素への長期資金の流入はこの日も確認されており、短期の金利変動とは異なる時間軸で進んでいます。

確認すべき指標は2つです。来週の国際原油先物の推移と、日銀が次回会合で超長期債市場に対して何らかのコメントを出すかどうかです。5月8日の東証プライム売買代金10.8兆円という「過去最大」が、まだ市場の天井を示していないとすれば、40年債4%が「騒音」で終わる可能性はあります。ただし、その判断の根拠は来週の原油と日銀発言が示すはずです。もし40年債利回りが4%台で定着し始めたとき、製造業増益は「過去」の材料として値引かれていくかもしれません。

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