6万円割れの正体|利上げは時間問題か

· Nikkei

金利が株を売った

日経平均が746円安の5万9804円で取引を終え、3週間ぶりに6万円の大台を割り込みました。しかし今日の本質は、下げ幅そのものではありません。一時1200円超の下げを演じた主役が、これまで相場を牽引してきたAI・半導体関連株だったという事実にあります。米長期金利が1月以来の高水準に跳ね上がり、ソフトバンクグループ、東京エレクトロン、そしてフジクラが連日で大幅安となりました。フジクラは一時11%下落しています。買い手だった海外モメンタム勢が、自ら積み上げたポジションを崩しに回ったということです。引き金は中東情勢を発端とするインフレの長期化観測です。植田総裁はパリで、長期金利が一時2.8%まで「速いスピードで」上昇したと指摘しました。資金の動きはこうです。海外短期筋の利益確定売りが、これまで指数を支えてきたAI・半導体銘柄から流出し、その出口の一部だけが小売・医薬・ファーストリテイリングといったディフェンシブに吸収された。残りは現金化されています。問題は、この売り手が戻ってくる条件が今日の材料の中に見当たらないことです。Nvidiaの決算待ちという一点に縮約された相場で、明日の早朝が判定の場になります。

韓国発の連鎖

そのモメンタム剥落の引き金は、日本市場の内側ではなく、韓国の労使交渉の決裂にありました。サムスン電子の労働組合が21日からストライキ突入を決めた瞬間、KOSPIが崩れ、日本と韓国を同じ「アジアAIモメンタム」として束ねて買っていた海外資金の前提が外れます。これがフジクラ連日安の構造的理由です。表面的には新中期計画が「保守的」と受け止められたという解説が出ていますが、それだけでは一時11%の下げを説明できません。日韓を一括りにしたバスケット売りが、個別ニュースの上に重なったと読むのが筋です。同じ日にAI関連が一律に売られたわけではない点が、この読みを補強します。古河電気工業はデータセンター事業の営業利益を2031年3月期までに前期比8.5倍の2000億円に引き上げる方針を発表し、好決算銘柄として買いを集めました。つまり海外勢が手放したのは「AI関連」というラベルではなく、「日韓モメンタム」というラベルの方です。資金フローはバスケット解体に伴うフジクラからの流出と、ファンダメンタル買いによる古河電への流入という二層構造に分かれた。ここで決着すれば指数の傷は浅い。しかし海外勢がラベルそのものを撤去し続けるなら、次に剥がれるのはどの銘柄か、その問いが残ります。

6月利上げの影

ラベル剥離が止まるかどうかを決めるのは、結局のところ日銀の6月会合です。片山財務相はパリで、中東依存リスクへの警戒を明言し、植田総裁は素材など川上産業で価格転嫁が「やや早めだ」と踏み込みました。前回の見送りを覆して6月利上げに動く地ならしに聞こえます。木原官房長官が「具体的手法は日銀に委ねられるべきだ」と発言したことも、政府が利上げを止めない意思表示と読めます。ここで相場の見方は二つに割れます。利上げ実施なら、円安抑制と引き換えに不動産や景気敏感セクターへの売りが深まる。今日後場に商社が下げ足を速め、不動産の一角が売られたのは、その先取りです。逆にイラン情勢が和らぎ原油が下落すれば、利上げの大義名分は弱まり、6万円割れは押し目に転じる余地が残ります。判定の物差しは三つあります。一つ目はNvidia決算後の米長期金利が4.7%を維持するかどうか。二つ目はドル円159円台での介入有無。三つ目は10年債利回りが2.8%を上抜けて定着するか。この三点のうち二つが利上げ方向に振れた瞬間、6万円割れは一時的な押し目ではなく、フレームの転換点として記録されます。逆に三つとも逆方向に振れれば、今日の売りはモメンタム勢の出口にすぎなかったということになります。

Link copied