ADRバイオ国産機器をレンタル|普及の採算化?

· Nikkei

レンタルで導入障壁を下げる

ADRバイオメディカルホールディングスにとって、今回の発表は再生医療機器を一台売る話にとどまりません。子会社が、国産の遠心分離器「Celution elite」を核に、医療機関向けのレンタル事業を始める計画です。開始予定日は2026年10月1日。高額機器を買い切る負担を下げ、再生医療を導入できる病院を増やす。その入口を作ろうとしています。

この発表で読み方が変わるのは、ADRバイオを「技術や機器の承認を待つ会社」とだけ見ることです。今回のレンタルには、保守、技術支援、操作研修、品質管理支援まで含まれます。つまり同社が狙っているのは、機器を納入して終わる取引ではなく、医療機関が実際に使い始めるまでの障壁を下げることだ、と解釈できます。

国産化の可能性と採算の空白

背景には、これまで海外製品を中心に展開してきた供給体制の課題があります。ADRバイオは、供給の安定性と仕入れコストに問題を抱えていたと説明しています。国産機器に切り替えられれば、この二つの課題を和らげられる可能性があります。しかも、専用のディスポーザブルキットはすでに国内製造販売承認を取得しています。

ただし、ここで「国産化イコール利益拡大」と決めつけるのは早いでしょう。最終の安全試験やEMC試験など、各種認証試験はこれからです。レンタル料金、導入する医療機関の数、機器一台あたりの採算、保守費用がどの程度になるのかも、今回の本文では示されていません。会社自身も、この新事業が2027年3月期の連結業績に与える影響は精査中だとしています。

普及設計図を収益事業へ

もう一つの材料が、男性の腹圧性尿失禁向け「セルーション セルセラピーキット」です。2026年6月の保険適用委員会での審議を経て承認され、次の審査手続きに進んだとされています。保険適用に向けた制度面の進展と、機器を導入しやすくするレンタルが同時に進めば、普及の条件は以前より整います。

しかし、保険適用が最終的にいつ決まり、どれだけの医療機関が採用するかはまだ分かりません。したがって、今回のニュースは売上高や利益がすぐ跳ねる材料というより、ADRバイオが普及のボトルネックを「技術」から「導入負担と運用体制」へ移して解こうとしていることを示す材料です。

保有者が確認すべき最初の地点は、10月1日にレンタル事業が実際に始まるのか、認証試験を終えられるのかです。ウォッチする人は、開始後の契約医療機関数、レンタル収入の開示、国産化による仕入れコストの変化、そしてSUIキットの保険適用手続きの進展を見る必要があります。そこが確認できるまでは、ADRバイオの再生医療ストーリーは、普及の設計図から収益事業へ移れるかを試す段階にあります。

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