Applied Materials|Terafabが握る業績の上振れ

2026-05-17 · Nikkei

決算の数字が示す構造的変化

Applied Materialsは第2四半期決算で売上高79億1,000万ドルを記録し、コンセンサスを2.7%上回りました。株価の反応は限定的でしたが、真に注目すべきは決算の「質」とガイダンスの大幅な上方修正にあります。経営陣は2026暦年の半導体製造装置(WFE)市場の成長見通しを、従来の「20%超」から「30%超」へと引き上げました。期中の10ポイントもの修正は、需要の加速が3カ月前の想定を大幅に上回っていることを示唆しています。

CFOのBrice Hill氏は、クラウド事業者の設備投資やファブ稼働率など、あらゆる先行指標が強含んでいると言及しました。現在、世界で100件以上のファブ建設プロジェクトを追跡しており、直近四半期だけで10件以上が追加されています。第3四半期の売上高見通しも市場予想を9.2%上回る89億5,000万ドルとし、下半期に向けた勢いの加速を裏付けました。

非GAAPベースの売上高総利益率は50%と25年ぶりの高水準に達し、営業利益率は140ベーシスポイント拡大して32.1%となりました。この売上成長に伴うマージンの拡大は、同社が価格競争ではなく付加価値によって成長を勝ち取っている証左です。一方で、フリーキャッシュフロー・マージンが14.9%から2.7%へと急低下した点は留意が必要です。これは需要増に備えた在庫積み増しや能力増強への先行投資によるものですが、将来のパイプラインが計画通りに収益化されるかどうかが、今後の焦点となります。

TSMCとの提携がもたらす優位性

決算発表の2日前、Applied MaterialsはTSMCとの共同開発パートナーシップを発表しました。シリコンバレーの新拠点「EPIC Center」での連携は、単なるPR活動以上の戦略的意義を持ちます。先端ファンドリー市場で約70%のシェアを握るTSMCのロードマップは、業界全体の指針です。このロードマップに早期からアクセスできることは、競合他社に対する決定的な「情報の非対称性」を生み出します。

TSMCのY.J. Mii副社長は、AI需要に応えるには業界横断的な協力が不可欠であり、EPIC Centerが次世代技術の準備を加速させると明言しました。これは、Applied Materialsが管理する施設に対し、TSMCが内部リソースと将来のロードマップをコミットしたことを意味します。この提携により、Applied Materialsは数年先のプロセスノードに向けた研究開発を最適化でき、量産段階での支配的な地位を固めることが可能になります。

CEOのGary Dickerson氏は、顧客との対話が2027年から2028年まで及んでいると述べており、AIインフラの構築が現在の投資サイクルを超えて長期化することを示唆しています。Morgan Stanleyが目標株価を454ドルに引き上げ、Citiが520ドル、Cantor Fitzgeraldが550ドル、Lynx Equityが540ドルと強気な設定を維持している背景には、この長期的な可視性があります。TSMCとの提携は、これらアナリストが描く数年後の収益予測の信頼性を担保する構造的な要因となっています。

Terafabと中国リスクの不確実性

2026年3月、TeslaとSpaceXは年間1テラワットの計算能力を目指す「Terafab」の建設計画を明らかにしました。Citiのアナリスト、Atif Malik氏はこのTerafabを、自身の目標株価520ドルの算出モデルには含まれていない「上振れ要因」と位置づけています。同氏の強気シナリオでは、WFE投資額は2027年に1,900億ドルに達すると予測されていますが、Terafabの稼働時期が重なれば、この数字は上限ではなく「下限」に変わります。

Applied Materialsにとって、Terafabが2ナノメートル級の先端チップを目指す点は大きな追い風です。同社は主要な装置メーカーの中でDRAMへの露出が最も高く、2026年には売上高の約31%を占めると予測されています。Terafabの要件となるAIアクセラレータにはHBM(高帯域幅メモリ)が不可欠であり、同社の配線、パターニング、エッチング技術への需要が集中する可能性が高いからです。

一方で、最大のリスクは中国市場にあります。NvidiaのH200などは中国向け輸出が許可されましたが、製造装置への規制は依然として厳格です。現在の強気な成長予測は、地政学的リスクによる中国向け売上の減少を、非中国圏の需要が十分に補えるかどうかにかかっています。8月13日の次期決算までに、Terafabの具体的な進捗や、輸出規制の範囲が同社の先端パッケージング製品にまで拡大されるかどうかが、市場の評価を決定づけることになります。