SBG外債5700億円|OpenAI出資が隠す利回りの代償

· Nikkei

最高値の裏側で動いた5700億円

4月16日、日経平均株価は前日比1384円高の5万9518円で引け、約1カ月半ぶりに史上最高値を更新しました。米・イラン停戦協議の進展期待、TSMCの好決算、マスク氏の半導体工場構想「テラファブ」を巡る思惑——市場は一斉に買いへ傾きました。売買代金は8兆6660億円。リスクテークの熱気が市場全体を覆った一日でした。

ところが同じ日、ソフトバンクグループが総額約5700億円の外貨建て社債の発行条件を決めました。ドル建て15億ドルとユーロ建て17.5億ユーロ、合わせて6本の債券です。利回りは年6.375%から8.5%、年限は3.5年から10年。この外債発行、表向きの用途は「OpenAIへの出資に伴うつなぎ融資の返済および既存外債の償還」とされています。

最高値更新の喝采が響く中で、ソフトバンクGは静かに高コストの資金調達を完了させていました。

AI投資の熱狂を誰が享受しているのか

ソフトバンクGの株価はこの日、大幅高となりました。テラファブ構想や半導体関連の地合いの良さが追い風になったのは間違いありません。しかし今回の外債発行を分解すると、異なる絵が浮かび上がります。

年利8.5%という上限利回りは、現在の投資適格社債の市場水準と比較して高い水準です。重要なのは調達の目的です。OpenAIへの出資に伴うブリッジローンを返済するために市場から資金を引っ張ってきた。これはAI投資の果実を刈り取る局面ではなく、コストを固定化し、バランスシートの圧力を次の期間に繰り延べる局面です。

「SaaSの死」銘柄の逆襲が話題になった日経平均最高値更新の日に、日本最大のAI投資会社は市場から5700億円を年6〜8%台のコストで調達していた。この対比は見過ごすには鮮やかすぎます。

TSMCの好決算は純利益が市場予想を上回り、AI・半導体関連の需要が依然強いことを示しました。アドバンテストと東京エレクトロンの2銘柄だけで日経平均を484円押し上げています。AI投資の上昇余力を直接享受しているのは半導体製造装置の供給側です。OpenAI株を保有するソフトバンクGは、AI投資の熱狂に乗じて市場が容認できる利回りの上限を試した格好と言えます。

社債利回りが示す次の分岐点

今後の焦点は2点です。ひとつはOpenAIの企業価値の推移。ソフトバンクGが保有する持分の価値がつなぎ融資のコストを上回り続けるなら、今回の外債発行は合理的な財務運営として評価されます。もうひとつは金利環境です。ドル建て3.5年債の利回りが6.375%でも市場が消化できたのは、現在の信用スプレッドが相対的に落ち着いているからです。米・イラン協議が決裂し地政学リスクが再燃すれば、スプレッドは拡大し、次回の資金調達コストはさらに上昇します。

円、よぎる2年前の記憶という見出しが示すように、27〜28日の日銀金融政策決定会合を前に為替市場も緊張感を高めています。ドル円は午後5時時点で158円86銭。円安が続けばドル建て外債の円換算コストはさらに膨らみます。

証拠となる数字をひとつ挙げるなら、ソフトバンクGが今回発行したドル建て10年債の流通利回りです。これが8.5%の上限を超えるかどうか——それが投資家のOpenAI評価を映した温度計になります。強気の見方をするなら、AI需要の拡大とともにOpenAIの評価額が上昇し、持分利益がコストを十分に吸収するシナリオが描けます。一方でOpenAIの収益化が想定より遅れた場合、5700億円の外債コストはソフトバンクGの財務を継続的に圧迫し、次の高値更新局面で株価の重石になり得ます。今日の最高値に高揚するよりも、ソフトバンクGの社債利回りの動向を冷静に追うことが、この構図を読み解く鍵になるでしょう。

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