SBG時価総額首位47兆円|ナフサ金利がAI株試す

· Nikkei

SBGがトヨタを抜く

ソフトバンクグループ(9984)の時価総額が6月1日、47兆8000億円に達し、22年間国内首位を守ってきたトヨタ自動車を初めて上回りました。その日のTOPIXは0.42%下落し、東証プライム市場の銘柄7割以上が値下がりしていました。

日経平均が604円高で最高値を更新した同じ日に、市場の大多数が売られていたという事実は、価格指数の動きが映す実態ではありません。外国人資本と国内機関投資家の資金は、AI関連の指数寄与度の高い数銘柄に集中し、内需・輸送・建設セクターから抜け出していました。

引き金になったのはソフトバンクGが5月31日に発表したフランスでの最大450億ユーロ(約14兆円)のAIデータセンター投資計画です。株価は前週末比14%超高の8541円で引け、上場来高値を更新しました。大和証券のストラテジストは「AI関連株が相場をけん引しているが、物色の広がりには欠けている」と指摘しています。

ソフトバンクGの株価上昇は、純資産価値(NAV)を時価総額が逆転するという異例の状態に達しています。3月末時点のNAVは40.1兆円でしたが、足元の時価総額はそれを約8兆円上回っています。傘下の英アームも時価総額50兆円超となり、親会社を上回っています。アンソロピックの評価額が9650億ドルでOpenAIを超えたとの報道も、AI資産全体の評価膨張に火をつけました。

この構図が問うのは一点です。NAVプレミアムを正当化するほど、SBGの「3本の矢」—データセンター・AI半導体・ロボット—の収益化が実際に進んでいるのか、それとも投資期待だけが先行しているのかです。

ナフサ危機と金利

SBGのフランス投資計画が国内資金をAI株に引き寄せる一方で、同じ日本経済の別の場所では全く逆の力学が働いていました。それがNAVプレミアムの持続可能性を直接問う変数です。

中東ホルムズ海峡の封鎖が続くなか、石油製品「ナフサ」の供給不安は6月に入っても深刻化しています。建材メーカーのLIXILは6月以降に住宅機器を平均8〜15%値上げし、サンゲツは7月受注分から壁装材・接着剤を18〜30%引き上げます。地域の工務店では断熱材とユニットバスが全く入ってこない状態が続き、大和ハウス工業も7月以降の納期回答が不能と説明しています。

このコスト上昇は、国内インフレ率の追加的な上昇要因として長期金利に波及します。フラット35の最低金利が初めて3%を超えたことは、住宅ローン市場で実際にその伝達が始まった最初のシグナルです。日本の長期金利が上昇すれば、企業の資金調達コストが増加し、設備投資・個人消費の双方に下押し圧力がかかります。

SBGのNAVプレミアムは、低金利と旺盛なAI投資期待という二つの前提の上に立っています。ナフサショックが起点となるインフレが長期金利を一段と押し上げれば、この前提の一方が崩れます。外国人資本のAI関連株への集中フローは現時点で継続していますが、その資金が内需株の急落という別の形の資産価格調整をすでに引き起こしています。問題は、この分離がいつまで続くかではなく、どの変数が収束の引き金を引くかです。

半導体株の選別

ナフサ起因のインフレ圧力と金利上昇リスクが高まるとき、AI資金フローは指数構成銘柄のSBGに集中したまま終わるのか、それとも国内半導体の中小型株まで拡散するのかが、今日の市場が部分的に答えを出した問いです。

キオクシアホールディングス(285A)は1日に10%超上昇し、村田製作所、SUMCO、ソシオネクストも8〜9%台の上昇を記録しました。出来高集中は単なる指数リバランスではありません。キオクシアの3月の月間売買代金は16兆円を超え、市場再編後の最大を記録しており、外国人資本と国内機関投資家の双方が同銘柄を主要ポジションとして積み上げています。AIデータセンターのストレージ需要が来27年3月期の営業利益を今期比4倍超の3兆円超に押し上げるとの市場コンセンサスが、この資金移動の位置圧力です。

さらに、時価総額50億円未満の超小型株インスペック(6656)が信用売り残の買い戻しを巻き込んで急騰しました。AI半導体の最終工程・外観検査装置という直接的な位置づけが、価格量シグナルから読み取れる小型株への物色拡散の最初の事例です。

ただし、この拡散がトレンド化するかどうかは一つの条件にかかっています。それは米国の雇用統計です。コアPCEが4月に前年比3.3%を記録し、ウォーシュ新FRB議長が就任直後にトリム平均インフレ指標の活用を求めているなか、今週末の非農業部門雇用者数が予想を上回れば米長期金利がさらに上昇し、AI株のNAVプレミアム全体が圧縮されます。SBGの14%高という一日の上昇幅が正当化される水準に留まれるかどうかは、日本のナフサインフレが長期金利に波及する速度と、米雇用統計後のドル金利の着地点が揃って確認される必要があります。

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