SpaceX上場と利上げ観測|キオクシア45兆円の持続力

· Nikkei

二重の資金圧力

キオクシアホールディングスが時価総額45兆円を超え、一時トヨタを抜いて東証プライム市場2位に浮上しました。しかしこの上昇は、半導体セクター全体に資金が流入した結果ではありません。同じ週、日経平均は5営業日続落して一時6万円を割り込み、外国人投資家による半導体銘柄への売り圧力は続いていました。キオクシアだけが逆行した理由は、国内機関投資家が他の半導体関連株から資金を引き上げてキオクシア1銘柄に集中させたという構造にあります。その圧力の起点はSpaceXです。SpaceX(SPCX)が6月12日にナスダックへ上場し、75億ドルを調達する史上最大のIPOを目前にして、MSCIが2月に警告した通り、パッシブ資金の指数リバランスが実際に動き始めました。日本市場ではこの流出が価格データから確認できます。日経平均への寄与が大きいソフトバンクグループなど半導体関連株が前日比120円超の下落を主導し、8日の終値は6万2713円でした。外国機関によるパッシブ売りが半導体セクターから出ていく一方、国内機関は利益確定売りに抗う形でキオクシアに資金を集めた。問題はその圧力が、SpaceX上場だけでなく、より大きな金利環境の変化とも重なっていることです。

利上げ観測の伝播

キオクシアへの国内資金集中が起きたのと同じ週、米国では別の圧力がかかっていました。5月の非農業部門雇用者数が17万2000人と市場予想の8万人の2倍超となり、FRBの利上げ観測が急速に強まりました。米10年債利回りは4.5%を超え、30年債は5%を突破しました。ナスダックは4.2%の急落を記録し、半導体ETFは10%超下落しました。これはブロードコムの決算ガイダンス据え置きに端を発したセクター売りが、金利上昇という別の売り圧力と重なった複合的な動きです。東京市場にとって問題なのは、この二つの外部ショックの方向が同じだという点にあります。SpaceX上場による資金吸引と、FRB利上げ観測による金利感応的なバリュエーション圧縮は、どちらも日本の半導体・AI関連株の割高感を高める方向に作用します。国内の日銀も4月会合で委員3名が利上げの必要性を主張しており、日本の長期金利も一時2.8%に達していました。外国パッシブ資金が出ていき、国内利上げ圧力が割引率を押し上げる環境で、キオクシアの株価が8万円を超えたという事実は、その株価が現在どれだけ薄い国内資金の集中によって支えられているかを示しています。

選別の臨界点

キオクシアが時価総額でソフトバンクグループに次ぐ2位に位置するという構図は、東証プライム市場のAI銘柄序列を変えました。ソフトバンクグループとキオクシアというAI・半導体関連株が1位・2位を占めたことは、外国人投資家の売りが続くなかで、国内機関資金がこの2銘柄に選別的に集中していることを意味します。キオクシアは前日の投資家説明会で2027年度からの配当開始を発表し、キャッシュフローが想定を上回れば2026年度下期への前倒しも検討するとしました。この配当コミットメントが国内機関のポジション根拠になっています。しかしこの根拠は、利上げ環境が深まるにつれて二つの問いを立ち上げます。一つは、NvidiaのAI半導体需要が2026年2〜4月期に史上最高の816億ドルに達したという事実が、キオクシアのNANDフラッシュ需要に本当につながるかという問いです。もう一つは、SpaceX上場後にパッシブ資金の指数リバランスが完了した時点で、外国機関が日本半導体セクターに戻ってくるかという問いです。米CPI(5月分)が今週水曜日に発表されます。FRBの利上げ観測を固定するか和らげるかはこの数字次第であり、それが外国資金の日本半導体セクターへの帰還タイミングを決めます。その前に国内機関のキオクシア集中が維持できるかが確認されないまま、外国資金の帰還がなければ、45兆円という時価総額は国内選別資金の重さだけで支えられた状態が続くことになります。

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