イビデン営業利益45%増でも|半月で60%近い急落

· Nikkei

イビデン急落の逆説

イビデンの株価が、年初来高値から半月足らずで60%近くまで下落しました。同時に発表された決算では、純利益が9%減った一方で、営業利益は45%増えています。

業績の伸びとは裏腹のこの急落は、イビデン単体の要因ではありません。半導体・AI関連株全体を巻き込んでいる、信用取引の売りの連鎖に起因しています。この連鎖の起点は、同じ半導体グループに属するキオクシアHDの急落です。

保有者は、この下落が業績と無関係な一時的な巻き込みなのか、それとも本格的な調整の入り口なのか、判断を迫られています。様子見の投資家にとっても、ここが押し目なのか罠なのかは、まだ見えていません。

キオクシア発、信用売りの連鎖

直接の引き金は、キオクシアHDが米Viasatとの特許侵害訴訟で敗訴したことです。陪審評決による損害賠償額は暫定で約2億2900万ドル、日本円でおよそ371億円にのぼります。これを受けて17日の東京市場でキオクシアHD株はストップ安となりました。

同じ17日、日経平均株価も高値から一時4130円安の6万2704円まで下げ、キオクシアHD株は上場来高値からおよそ54%安の水準まで売られました。個別の訴訟結果が、指数全体を揺らす規模の下落に転化した格好です。

兜町には、高値から8%安になると信用取引の追い証売りが出始め、12%安で追い証売りが増え、20%安で機関投資家のポジション縮小が加速するという相場観があります。この連鎖こそが、イビデンのように訴訟とは直接関係のない銘柄まで、業績と無関係に売りを広げているメカニズムです。

取り違えられた銘柄

ここで市場が暗黙に置いている前提は、AI関連株はどれもキオクシアと同じメモリー価格サイクルのリスクを共有しているという見方です。この前提のもとでは、キオクシアの急落は他のAI関連株にもそのまま当てはまることになります。

しかしイビデンの主力事業は、メモリー製品そのものではなく半導体パッケージ基板です。業績はメモリー価格の変動よりも、AIサーバー向けの設備投資の伸びに連動しています。営業利益45%増という数字は、その設備投資需要の強さを映したものです。

この事業構造の違いが市場に正しく織り込まれない限り、業績が伸びていても株価は信用売りの連鎖に引きずられ続けることになります。逆に違いが認識されれば、下落の性質そのものが見直される可能性があります。

検証すべき変数

保有者にとっての分岐点は、AIサーバー向け基板の需要が次の四半期発表でも伸び続けているかどうかです。営業利益の伸びが続けば、今回の急落は一時的な巻き込みだったと確認できます。

一方で新規勢が見るべきは、日経平均や半導体株の下落率が15%から20%の追い証ラインを超えて、信用売りの連鎖が収束するかどうかです。連鎖が収まれば、この下落は押し目に変わります。

逆に基板需要の伸びが止まり、追い証売りも収まらなければ、この下落は一時的な巻き込みではなく本格的な下方修正の入り口になります。次の決算発表と、信用取引の需給動向が、その分かれ目を映し出します。

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