ソニーグループ|増益の裏に潜む熊本拠点の生産制約
決算の中身、四半期最高益の構造
ソニーグループが7月31日に発表した第1四半期決算は、営業利益が4764億9900万円と、前年同期比40.2%増加しました。市場が身構えていたのは半導体事業の不確実性でしたが、蓋を開けてみるとイメージング&センシング・ソリューション部門の営業利益は前年同期比125.2%増という突出した伸びを見せています。売上高も2兆8377億円と8.2%増え、ゲームや音楽、映画といった主力エンタメ事業もそろって増益となりました。
この結果を受けてソニーは通期の業績予想を上方修正しました。最終利益は従来予想の1兆1600億円から1兆2100億円へ、500億円積み増しています。営業利益予想も1兆6000億円から1兆7200億円に引き上げられ、修正率は7.5%増と、単なる為替差益の範囲を超える上方修正幅になっています。
通期計画に対する第1四半期時点の進捗率は営業利益で27.7%に達しており、単純な4分の1ペースを上回っています。会社側は上方修正の理由を為替の影響としていますが、イメージング&センシング部門の伸び幅の大きさを見ると、円安だけでは説明のつかない需要そのものの強さが透けて見えます。
地震で止まった半導体拠点という影の変数
この好決算の裏側には、見過ごせないリスク要因があります。熊本県で発生した最大震度7の地震を受け、ソニー傘下でイメージセンサーを生産するソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの熊本テクノロジーセンターは、生産活動を停止していました。この拠点は民生用デジタルカメラや産業機器、車載向けのイメージセンサーを製造しており、まさに今回決算で最も伸びた事業の心臓部にあたります。
ソニーは31日、この熊本拠点について8月4日から段階的に操業を再開すると発表しました。建屋と設備の安全確認を終え、生産再開が可能と判断したためです。つまり、市場が好感している第1四半期の決算数字は、熊本拠点が稼働を止めていた期間の実績だったという点を見落とすと、この決算の意味を読み違えることになります。
ソニーは2016年の前回地震を教訓に、建屋や生産設備の耐震強化と、パートナー企業との連携による早期復旧体制を事前に整えていました。前回は復旧までおよそ3.5カ月を要しましたが、今回は被害が軽微だったことに加え、事前対策の効果もあり、8月中旬にはフル稼働の水準まで復旧する見込みだといいます。
止まっていた生産が戻る先に何が待つか
ここで焦点になるのは、8月以降の第2四半期です。熊本拠点が生産停止の影響を受けていた第1四半期の段階でこれだけの増益を達成できていたのなら、フル稼働が回復した後の四半期には、停止していた分の出荷が積み上がって業績にどう反映されるのかが問われます。イメージング&センシング部門は自動車や産業機器向けの需要も取り込んでおり、生産能力の正常化がそのまま増収要因になり得ます。
実際、31日の東京市場ではAI・半導体関連株への見直し買いが広がり、日経平均は大幅続伸となりました。ソニーグループ株もこの流れの中で後場にプラス圏へ浮上しています。イメージセンサーは画像認識やAI関連機器に不可欠な部品であり、市場全体の関心の高まりとソニーの決算内容が同じ方向を向いた形です。
現時点で言えることは、ソニーの好決算は生産制約という逆風がありながら達成された数字だという点です。8月4日からの段階的再開と、8月中旬に見込まれるフル稼働が計画通り進むかどうかが、この増益基調が一過性の為替効果なのか、需要の実力を反映した持続的な伸びなのかを見極める次の確認材料になります。決算発表時点の情報だけでは、その先の生産能力回復ペースまでは確定しておらず、今後の生産再開の進捗を追う必要があります。