ニチレイKFC全店再開でも消えない影|データ流出脅迫と生協欠品の継続

· Nikkei

KFC全店再開の裏で止まらない出荷

ニチレイの株価は7月15日、前日発表のシステム障害を嫌気して1,940円まで急落しました。下落率は8.2%、東証プライムの値下がり率で3位という規模でした。そして本日7月22日、日本ケンタッキー・フライド・チキンが全店舗で通常営業を再開したと発表しました。

しかし同じ7月22日、コープデリ生活協同組合連合会は7月20日から24日配達分の一部冷凍食品を欠品にすると案内しています。パルシステムとユーコープも7月21日時点で一部商品の欠品可能性を公表したままです。KFCという最も目立つブランドが正常化した瞬間に、生協という別の経路では欠品がむしろ継続していることになります。

さらに本日、ランサムウェア集団RansomHouseがダークウェブ上のリークサイトで犯行声明を出し、盗んだとされるデータを引き合いに交渉を要求していることが判明しました。個人情報が保存されていたサーバーも被害を受けており、ニチレイは個人情報保護委員会に対して漏えいの可能性がある事案として報告しています。「復旧」のニュースと「新たな脅迫」のニュースが、同じ日に並んで報じられているのです。

なぜ一社の障害が5000社に波及したのか

この障害がここまで拡大した理由は、ニチレイの事業構造そのものにあります。ニチレイは一般に冷凍食品メーカーとして知られていますが、実態は全国75カ所に冷蔵倉庫を持ち、約7000台のトラックを日々稼働させる、国内最大級の低温物流インフラ企業です。取引先は約5000社に上ります。

だからこそ、江崎グリコは西日本のアイス出荷に遅れが生じ、冷凍うどんのテーブルマークは家庭用・業務用の全商品が出荷できなくなりました。秋田市では40校の学校給食で献立変更が必要になり、仙台市でも複数校でメニューを差し替えています。一社のシステム障害が、自社製品を持たない多数の企業の店頭在庫を同時に空にしたのです。

この構造を踏まえると、KFCという一取引先が先に正常化するのは自然な結果にすぎません。本当に問われるべきは、ニチレイが掲げる「今週中の全拠点通常稼働」が、生協系を含む約5000社すべてに行き渡るかどうかです。

前例が示す回復曲線と、今日増えた新しい変数

同種の前例は参考になります。昨年10月に攻撃を受けたアスクルは、全物流センターの出荷再開までおよそ5カ月を要し、その間の売上減少は約700億円に達しました。同じく昨年9月に攻撃を受けたアサヒグループホールディングスも、安全復旧までおよそ4カ月かかり、昨年6月から11月期の実質営業利益は約66億円の赤字となっています。

この前例に照らすと、KFCの再開だけを見て売り込まれた分の押し目と判断するのは早計です。株価にとっての本当の分岐点は二つあります。一つは、コープデリやパルシステムなど生協系の欠品が今週中に実際に解消するかどうか。これが確認できれば、アスクルやアサヒより短い期間での実務的な正常化という前向きな読みが成立します。もう一つは、RansomHouseが要求するデータ流出の脅迫が実際の漏えいに発展するかどうかです。これが現実化すれば、業務復旧とは別の次元でブランド毀損と対応コストが積み上がり、前例の4カ月から5カ月という回復期間がむしろ下限になりかねません。

保有者にとっての次の確認点は、KFCの再開報道ではなく、生協系宅配の欠品案内が今週中に取り下げられるかどうかです。ここが解消されれば、ニチレイが掲げる全拠点通常稼働の宣言が実態を伴っていることになります。一方、様子見の投資家にとっての警戒点は、RansomHouseの脅迫が実際のデータ公開に至るかどうかであり、これが確認されるまでは新規のポジションを取る根拠が乏しいままです。

Link copied