三菱UFJ 時価総額首位|金利上昇の恩恵か落とし穴か

· Nikkei

骨太ショックとMUFG上場来高値

三菱UFJフィナンシャル・グループが7月13日、株式分割考慮後の上場来高値を更新し、時価総額42兆円で国内上場企業首位に浮上した。その直前の7月7日、長期金利の指標となる10年国債の利回りが一時2.850%をつけ、1996年10月以来、約30年ぶりの高水準を記録していた。金利が上がれば銀行の利ザヤが拡大するという単純な論理で、資金は銀行株に集中した。しかしこの金利急騰は、市場が望んだ正常な利上げからではなく、政府の財政拡張への不信感から生じたものだった点に、この相場の危うさがある。

きっかけは政府が6月末に示した「骨太の方針」原案だった。日本銀行の利上げを牽制すると受け取れる文言が盛り込まれたとの報道を受け、市場は「日銀の利上げが遅れるならインフレが加速する」と判断し、財政悪化懸念も重なって国債を売り浴びせた。城内経済財政担当大臣が「日銀の独立性に変わりはない」と釈明しても、金利上昇は止まらなかった。つまり、MUFGを首位に押し上げた金利上昇は、政府の財政運営への市場の警告という色彩を帯びている。その警告は、銀行株にとって純粋な追い風と見てよいのか、という問いが浮かぶ。

利ザヤ拡大と保有国債評価損——追い風の裏側

銀行株の買いを支える論理は明快だ。貸出金利が上昇すれば預金金利との差、すなわち利ザヤが広がり、銀行の本業収益が改善する。実際、米系大手証券は今月MUFGの目標株価を3900円に引き上げ、「金利のある世界」で銀行業の収益性が本格回復するという読みを示した。しかしこの論理が見落としている点がある。銀行は同時に、大量の国債を保有する最大の機関投資家でもある。金利が上昇すれば国債価格は下落し、その保有国債に評価損が発生する。利ザヤ拡大の恩恵を受けながら、保有資産の価値が毀損されるという矛盾を、MUFGは同時に抱えている。

さらに深刻な矛盾がある。財政悪化懸念に起因する金利上昇は、インフレと同時に企業や家計の借入コストを引き上げる。借入負担が増えた融資先が返済困難に陥れば、銀行の不良債権が増加する。今年上半期の倒産件数は12年ぶりに5000件を超えており、この地合いで金利がさらに上昇すれば、信用コストの拡大という形で銀行収益を圧迫する経路もある。つまり「金利上昇=銀行は丸儲け」という市場の見立ては、財政懸念型の金利上昇という今回の特殊な文脈では自明でない。この逆説こそが、MUFGの株価上昇が単純な追い風論で終わらない理由だ。

市場が示した資金の動きは象徴的だった。7月7日、サムスン電子の好決算にもかかわらず半導体株が売り込まれ、日経平均は1480円安と大幅続落した。この日の東証業種別で値上がり率トップとなったのが銀行業だった。半導体から銀行への資金シフトは、AIラリーへの過熱感が意識されると同時に、金利上昇の恩恵株として銀行が選好されたことを示している。ただし、外国人投資家が半導体関連から手を引く一方で、同じ外国人がMUFGを買っているという資金の方向性が、今週のデータでは確認されていない。追い風の源泉が何かによって、その持続性は大きく変わる。

GPIFの逆張りと7月16日の審判

7月10日、片山財務大臣がGPIFなど年金基金の国内金融資産への追加投資を「後押しする」と発言すると、長期金利は2.765%まで急低下した。金利を押し上げた財政拡張懸念に対し、政府系の最大機関投資家が逆方向から国債を買い支えるという構図は、政府内に自己矛盾が生じていることを意味する。銀行株に資金を入れた投資家は「金利が高止まりすれば利ザヤは拡大する」と期待しているが、GPIFが金利を下げようとするなら、その期待は裏切られる方向に圧力がかかる。これが現在のMUFG相場が内包している、最も解決されていない問いだ。

鍵を握るのは7月16日の日銀金融政策決定会合だ。エコノミスト51人中49人が利上げを予想しており、無担保コールレートが0.75%から1.0%へ引き上げられる公算が大きい。この決定が市場にとっての分岐点になる。日銀が利上げに動けば、それは「財政拡張に屈せず金融正常化を進める」というシグナルとなり、長期金利の財政プレミアムが縮小に向かう可能性がある。財政懸念の後退と政策金利の引き上げが同時に起きれば、銀行の利ザヤは短期金利連動で着実に広がりながら、長期金利の急騰リスクが和らぐ、MUFGにとって最善のシナリオになる。

保有者にとっての確認変数は、7月16日の日銀決定会合後に長期金利が低下に向かうかどうかだ。利上げにもかかわらず長期金利が2.8%を再び超えるなら、それは財政悪化懸念が解消されていないことを意味し、MUFGの保有国債評価損が拡大する圧力が続くと見るべきだ。一方、非保有者が見るべきは、骨太の方針の最終文書が財政健全化目標の後退を明記するかどうかという点だ。財政懸念が制度的に確認されれば、長期金利の高止まりは構造化し、銀行株への資金流入も断続的に続く。逆に財政規律の立て直しが示されれば金利は低下し、MUFGの追い風も一時的なものとなる。7月16日の日銀決定と、その後の長期金利の反応が、この相場の真価を決める。

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