日銀1.0%利上げ観測|日経1392円高の分裂相場

· Nikkei

31年ぶりの利上げと1392円高の同日

本日、日経平均株価は4営業日ぶりに反発し、終値は1392円高の6万5416円となりました。前場は629円高で折り返し、後場にかけて上げ幅をさらに拡大しました。その同じ日に、日銀が15・16日の金融政策決定会合で政策金利を0.75%から1.0%に引き上げる方針であることが伝わりました。1.0%という水準は1995年以来、31年ぶりの高さです。

株式市場は金利上昇を嫌うはずです。それが常識とされてきました。ところが本日の東京市場は、利上げ観測が流れた後も上昇を止めませんでした。これが今日という日の核心的な問いです。利上げが確実視されているのに、誰が買っていたのか。

前日8日の米国市場では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が5.6%高となりました。米国でトランプ大統領がイスラエルとイランの停戦合意への期待感を示したことで、地政学リスクへの懸念が後退しました。東京市場はこの流れを受け、序盤から半導体関連銘柄を中心に買いが先行しました。個別では東京エレクトロン(8035)が8.9%高の5万9920円、アドバンテスト(6857)が上昇、太陽誘電(6976)が外資系証券の目標株価大幅引き上げを受けて20.0%高の1万7975円と年初来高値を更新しました。

しかし業種別に見ると、上昇は一様ではありませんでした。海運業、証券・商品先物業、保険業が上昇した一方で、非鉄金属、情報・通信業、ガラス・石油製品業が下落しました。ソフトバンクグループ(9984)は同日に時価総額でトヨタを抜き日本1位になったと報じられましたが、株価は204円安と下落しました。この業種の割れ方が、今日の相場の本質を示しています。

東エレク414円の意味——相場の実像

日経平均の押し上げ寄与度を見ると、東京エレクトロン1銘柄だけで約414円分を担っていました。2位のアドバンテストが約233円、3位以下は大幅に寄与度が落ちます。日経平均1392円高のうち、AI半導体関連2銘柄だけで約647円、全体の46%超を占めていた計算になります。

ここに日銀利上げ観測との矛盾が浮かびます。植田和男総裁は6月3日の講演で、原油高による物価上振れリスクが景気減速リスクを上回るとの認識を示しました。利上げの根拠として原油価格の上昇を挙げています。ところが原油価格が下がれば、利上げの前提が崩れる。停戦合意の期待から原油価格は上げ止まりつつあり、前場中ごろには日経平均が一時下げに転じる場面もありました。

市場が前提としているのは「中東の地政学リスクが収束する」という見通しです。この前提が成立すれば、原油安→物価上振れリスク後退→利上げ見送りか利上げ幅縮小というシナリオが開きます。一方で日銀は「中東情勢は依然不透明だが、物価上振れリスクを重く見た」と述べています。つまり市場と日銀が、同じ中東情勢を真逆の方向で読んでいます。

半導体株を買っているのが外国人投資家であることはSOXとの連動から明らかで、国内の利上げ観測をひとまず無視した形でポジションを入れています。一方、ソフトバンクGや情報・通信など内需側の資本はむしろ売られています。この外国人買い・内需売りという構図こそ、1392円高の内側にあった資金の実像です。

利上げ後の相場——確認すべき変数

日銀が6月16日に利上げを実行した場合、1995年以来31年ぶりとなる1.0%という政策金利が確定します。問題はその後です。国債買い入れについて、日銀は2027年4月以降に停止する案を検討していると伝わっています。買い入れ停止が現実となれば、長期金利はさらに上昇する可能性があります。

過去の類似局面として、1994年から1995年にかけての米国の連続利上げ局面では、債券市場が急落し、株式市場もいったん売られた後に選別買いへ移行するパターンがありました。今回の日本の状況と全く同じではありませんが、利上げ後に資金が業種を選別し始めるという動きは共通する観測です。

本日の相場で一つはっきりしたことがあります。半導体関連への資金は利上げ観測を織り込みながら動いており、これを売り崩す動きはまだ本格化していません。アドバンテスト社長は「AI革命はまだ始まったばかり、半導体の進化はこれから加速する」と述べ、同社のテスター世界シェアは2023年の58%から2025年には65%に拡大したと明らかにしています。この業績期待が利上げ材料を一時的に上回っています。

確認すべき分岐点は二つあります。一つは来週16日の日銀決定後、外国人投資家が半導体株のポジションを維持するかどうか。もう一つは企業物価指数の翌日発表で、原油高を起点とした輸入物価上昇が確認された場合、利上げ不可避の読みが強化され、金融株は買われ半導体株は利確の対象になる可能性があります。

逆に停戦合意が進んで原油価格が明確に下落した場合、日銀の利上げ根拠が弱まり、引き上げが見送られれば、今日の半導体株主導の上昇はその後も続く地合いとなります。どちらの方向に動くにしても、カギは16日です。利上げが実施された後も外国人買いが続いているとすれば、それは利上げの恩恵を受ける業種への資金移動がまだ始まっていないことを意味します。

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