東京エレクトロン|懸念の震源決算で逆流

· Nikkei

3日間、日経平均を押し下げ続けた銘柄

東京エレクトロンです。7月24日、28日、29日の3営業日にわたって、この銘柄は日経平均の値下がり寄与度でトップを独占し続けました。29日の大引けだけでも、東エレク1銘柄で日経平均を約595円押し下げています。半導体・AI関連株への売りが再燃するたびに、真っ先に名前が挙がる銘柄でした。

この下落の背景には、格付け会社フィッチが人工知能向けの大規模投資が主要な信用リスクになり得ると警告したことがありました。生成AI関連の設備投資が過熱しているのではないかという懸念が、半導体製造装置最大手である東エレクの株を繰り返し売る材料になっていたのです。ソフトバンクグループやキオクシアホールディングスといった同じ文脈の銘柄も、連日そろって値下がり寄与度の上位に並んでいました。

東エレクは半導体製造装置の国内最大手であり、AI向け半導体の需要動向を映す体温計のような銘柄でもあります。だからこそ、この会社が発表する決算は、懸念そのものの是非を判定する材料になります。7月30日、その決算発表の日を迎えました。

決算が示した逆方向の数字

7月30日大引け後、東エレクは2027年3月期第1四半期の決算を発表しました。4月から6月期の連結経常利益は前年同期比46.3%増の2156億円。市場が警戒していたAI投資の減速どころか、需要はむしろ加速していたことを示す数字でした。

会社は同時に、4月から9月期の上期経常利益予想を、従来の4370億円から4640億円へ6.2%上方修正しました。増益率は42.4%増から51.2%増へと拡大し、4期ぶりとなる上期の過去最高益予想を、さらに上乗せした格好です。上期配当も361円から384円へ増額し、売上営業利益率は26.3%から28.9%へ上昇しました。生成AI半導体の需要増が製造装置の販売を押し上げているという説明が、数字で裏付けられています。

この決算を受けて、東エレクは寄与度ランキングで一転、上昇側の上位に浮上しました。同じくAI関連の決算を発表したアドバンテストと合わせて、2銘柄で日経平均を約885円押し上げる原動力になっています。数日間売りの震源だった銘柄が、そのまま買いの震源に転じた形です。

懸念は消えたのか、一時的な反発なのか

ただし、今回の決算で東エレクが開示したのは上期の修正予想までで、2027年3月期通期の業績予想は依然として発表されていません。売上高や営業利益、経常利益の通期予想は開示されておらず、アナリスト予想のコンセンサスが参考値として残るのみです。1四半期分の強い数字と上期の上方修正だけで、数日間積み上がった懸念がすべて解消されたと断定するには材料が足りません。

それでも、この決算が持つ意味は小さくありません。AI投資懸念の震源として売られ続けていた当の企業自身が、その懸念に対する最も具体的な反証を提示したからです。問いは「AI投資は過熱しているか」から、「この需要の強さがどこまで持続するか」へと移りました。通期予想の開示や次の四半期決算が、その持続性を判定する次の材料になります。保有者にとっては強い決算を根拠に持ち続ける材料が増え、非保有者にとっては数日間の下落が押し目だったのかを見極める局面が続きます。

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