楽天銀行 骨太ショックで利ザヤ拡大|金利2.85%30年ぶり高水準で政府と市場が真逆の結論
長期金利30年ぶり高水準と楽天銀行の逆説
楽天銀行が連日の大幅続伸となっている。背景にあるのは7月7日に新発10年国債利回りが2.850%へ上昇し、1996年10月以来約30年ぶりの高水準を更新したことだ。しかし問題は金利上昇そのものではない。上昇の根拠として市場が想定するシナリオと、政府が提示するシナリオが真逆になっているという点にある。その亀裂を解くカギは、政策文書の一行が生み出した財政懸念の連鎖にある。
7月7日、10年国債の利回りが前日比2.0ベーシスポイント上昇して2.850%に達した。この動きを主導したのは「骨太の方針」の原案報道だ。財政健全化の目標であった基礎的財政収支(プライマリーバランス)が補助的指標に格下げされ、「財政健全化」の文言そのものが削除されたとの内容が市場に伝わった。結果として長期金利の上昇に拍車がかかり、楽天銀行には利ザヤ拡大期待の買いが集中した。米系大手証券もレーティングを強気に引き上げた。
しかし、利ザヤ拡大という楽観のシナリオが成立するためには、この金利上昇が今後も継続するか、少なくとも日本銀行の利上げ判断につながる必要がある。そしてその前提として、政府と市場の間で起きているある認識の断絶が、どちらの読みが正しいかによってシナリオ全体が反転する。
骨太ショックの正体——「誤解」と「警鐘」の断絶
政府は市場の反応を「誤解」と断じた。城内実経済財政相は7日の会見で、骨太相場を「趣旨と異なる受け止め」と表現し、骨太策定に携わった政府関係者はロイターの取材に「市場がネタにして遊んでいるだけ」と述べた。骨太の主要方針の修正は予定していないと複数の政府関係者が明言している。
市場はまったく異なる読み方をしている。エキスパート分析では、この間インフレ連動債から計算した長期期待インフレ率はむしろ2.32%台から2.02%台へ低下しており、名目金利が逆に上昇したということは実質長期金利が上昇したことを意味する。インフレ懸念ではなく、財政悪化懸念または政府の財政政策運営への不信感が実質金利を押し上げているという分析だ。
ここに核心的な亀裂がある。政府は「財政規律を維持しつつ成長投資を進める」という立場で修正を拒否し、市場は「財政健全化の明確な目標が失われた」と読んでいる。同じ文書を読んで反対の結論に至る二つの解釈が拮抗している。この亀裂が解消されない限り、楽天銀行の上昇テーマの根拠も宙吊りの状態が続く。
ある政府関係者は「金利上昇は一時的なものだとの過度な楽観論が政府内に広がっている」と内部の危機感の欠如を認めた上で警鐘を鳴らしている。政府側と市場側が「一時的」か「構造的」かで判断を真逆にしている今、どちらの仮説が正しいかを決める材料は7月中に登場する。
利ザヤ拡大テーマの構造的限界
楽天銀行への期待の核心は利ザヤの拡大にある。長期金利が上昇すれば国債など保有資産の運用利回りが高まり、預金利息との差——利ザヤ——が広がる。この経路は会計上は正しい。しかし見落とされている前提がある。
骨太の方針の原案には日本銀行の利上げを牽制する趣旨に読める文言が含まれているという報道があった。もしこの解釈が正しければ、骨太原案は「財政規律を緩め、かつ日銀に利上げをさせない」という二重の圧力を市場に伝えたことになる。つまり長期金利が財政懸念で上昇している一方で、日銀の政策金利は据え置かれ続けるというシナリオが生まれる。
この状況は銀行にとって短期的には追い風に見えるが、落とし穴がある。財政懸念型の金利上昇は国債価格の下落を意味する。大量の国債を保有する楽天銀行のような機関にとって、保有国債の含み損が拡大するリスクがある。利ザヤ拡大という表の話と、国債含み損という裏の話が同時に走っているにもかかわらず、市場の買いは前者だけに注目している。日銀が結果として利上げを遅らせれば、将来の利ザヤ拡大余地も限定される。
さらにロイターの報道では、長期金利の上昇が止まらない場合「果たして円安も止まるのか」という問いが提示されている。円安が止まらなければ物価上昇が続き家計が圧迫され、楽天銀行の個人向けサービスの収益環境にも影響が及ぶ経路が見えてくる。金利上昇は一枚岩の追い風ではなく、利ザヤ拡大・国債含み損・円安継続という三つの力が同時に動く複合的な変数だ。
保有者と監視者が今週確認すべき一点
判断を決めるのは骨太の方針の閣議決定の最終文言だ。7月中に閣議決定される予定であり、そこで財政健全化の具体的な指標と国債発行の抑制方針がどう記述されるかが、市場対政府の亀裂を縮めるか広げるかを決める。
楽天銀行の保有者が注視すべきは、閣議決定後の長期金利の方向性だ。骨太最終文で財政規律の回復が市場に伝われば、現在の財政懸念型の金利上昇は一部が巻き戻し、保有国債の含み損改善につながる一方で利ザヤ拡大期待も弱まる。株価にとって純粋な追い風かどうかは、金利上昇の性質(財政懸念型か日銀利上げ期待型か)の分類によって変わる。
監視者が入るかどうかの分岐点も同じ変数にある。閣議決定後も長期金利が2.85%を超えて上昇を続け、かつ日銀が次回金融政策決定会合で利上げの意思を示すシナリオが確認されれば、利ザヤ拡大の根拠は政策的に裏付けられ、銀行株全体の評価が変わる局面になる。逆に、閣議決定で財政規律が後退し、日銀が利上げを見送り続けるなら、現在の株価上昇は財政不安の副産物にすぎず、国債含み損と円安継続の複合リスクが顕在化する可能性がある。判断の軸は「骨太最終文言と日銀次回会合の組み合わせ」——この二つが同じ方向を向いた時に初めて、楽天銀行の利ザヤ拡大テーマは機能する。
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